翻訳|allelomorph
生物の、ある染色体上で同じ座位にある二つまたはそれ以上の遺伝子によって支配される形質をいう。イギリスの遺伝学者W・ベートソンとサウンダースE. R. Saunders(1865―1945)によって名づけられた(1902)。対立形質を支配する遺伝子を対立遺伝子alleleといい、正常または野生型を支配する遺伝子が突然変異をおこして生じたものである。したがって、対立形質は互いに形態や生化学的特徴について異なった性質を示す。たとえば、エンドウの種子の黄色に対して緑色、ショウジョウバエの赤眼に対して白眼、ヒトの正常眼に対して先天性色覚異常というように対比される形質である。
対立形質は、それらを支配する遺伝子をヘテロ(異型)にもつ個体で、表現型として発現するほうの形質を顕性dominantといい、隠されて発現しないほうの形質を潜性recessiveという。エンドウの種子では、黄色が顕性、緑色が潜性、ショウジョウバエの眼色では、赤色が顕性、白色が潜性である。
一つの遺伝子座に野生型も含めて三つ以上の対立遺伝子があるとき、それらは複対立遺伝子multiple allelesとよばれ、血液型や抗原性を支配する遺伝子などでは、比較的多く、100ほどの複対立遺伝子が知られているものもある。ショウジョウバエの複眼の形や色などの遺伝子には、多くの複対立遺伝子が知られており、たとえば白眼whiteでは130以上の複対立遺伝子が知られており、それぞれ複眼の白色の色が異なっている。微生物では、多くの遺伝子でそのDNAを構成する各塩基対がそれぞれ単一の置換、欠失、重複をおこし多様な複対立遺伝子も知られている。
複対立遺伝子の表記法は、生物種によってかならずしも統一がなされていないが、多くの生物では、遺伝子を示す基本的な記号(通常イタリック体)に、数字やアルファベットの肩付き符号をつけて表す。微生物では、形質を表す英語の綴(つづ)りから3文字をとって、遺伝子の記号とし、複対立遺伝子がある場合には、遺伝子記号の次に大文字のアルファベットまたは数字をつける。
[黒田行昭]
『駒井卓著『人類の遺伝学』(1966・培風館)』▽『黒田行昭編著『21世紀への遺伝学1 基礎遺伝学』(1995・裳華房)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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