小泉八雲(読み)コイズミヤクモ

デジタル大辞泉 「小泉八雲」の意味・読み・例文・類語

こいずみ‐やくも〔こいづみ‐〕【小泉八雲】

[1850~1904]英文学者・作家ギリシャに生まれる。本名、ラフカディオ=ハーン(Lafcadio Hearn)。明治23年(1890)来日。小泉節子と結婚、のち、日本に帰化。松江中学校・東大などで英語・英文学を教えるかたわら日本文化を研究、海外に紹介した。著「知られざる日本の面影」「」「怪談」など。

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共同通信ニュース用語解説 「小泉八雲」の解説

小泉八雲

ギリシャに生まれ、英国とフランスで教育を受けた。米国で新聞記者などを経て、1890(明治23)年に来日。尋常中学校の英語教師として赴任した松江市で、同年8月から翌91年11月まで過ごし、日本人のセツと結婚した。熊本や神戸でも暮らし、東京で死去。東京帝国大では英文学の講師も務めた。セツから聞いた昔話を基に、多くの怪談を執筆した。

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精選版 日本国語大辞典 「小泉八雲」の意味・読み・例文・類語

こいずみ‐やくも【小泉八雲】

  1. 英文学者、小説家。イギリス名は、ラフカディオ=ハーン(Lafcadio Hearn)。ギリシアに生まれ、渡米して新聞記者となり、明治二三年(一八九〇)来日。松江中学、五高、東京帝国大学早稲田大学の教壇に立ち、その間小泉節子と結婚、帰化した。日本を愛し、印象記や随筆、論文、伝説などを英文で書き世界に紹介。著に「心」「霊の日本」「怪談」など。嘉永三~明治三七年(一八五〇‐一九〇四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小泉八雲」の意味・わかりやすい解説

小泉八雲
こいずみやくも
(1850―1904)

随筆家、批評家。ラフカディオ・ハーンヘルン)Lafcadio Hearn。ギリシアに生まれ、生後1年半でアイルランドダブリンに移り、1863年左眼失明。のちフランスのカトリックの学校を中退、渡米して新聞記者となり、『タイムス・デモクラット』紙の文学担当者としてモーパッサン、ゾラ、ドストエフスキーハイネなどの翻訳・紹介者となる。1890年(明治23)4月に来日し、8月島根県の松江中学に赴任。年末に小泉セツと結婚。翌年11月熊本の第五高等学校に転じ、94年神戸の『クロニクル』紙に入社。『知られざる日本の面影』をアメリカで出版し、日本紹介を始める。96年2月日本に帰化し小泉家を継ぎ、小泉八雲を名のる。8月上京し、東京帝国大学文科大学講師となり、英文学を講ずる。1903年(明治36)3月退職。翌年4月東京専門学校(早稲田(わせだ)大学の前身)講師となるが、狭心症のため9月26日に急逝した。東京の雑司ヶ谷(ぞうしがや)墓地(現雑司ヶ谷霊園)に葬られる。八雲は日本人の風俗、習慣、伝説、信仰など日常生活を見聞した体験に基づいた日本研究を深め、日本のありのままの姿を欧米に伝えた。没後教え子ノートによって大学の講義がまとめられ、『人生と文学』『英文学史』などがアメリカで刊行された。ほかに日本人と日本を精神構造、社会、政治、宗教などの側面から全般的に考察した『心』『神国日本』の著作を残しているが、『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』などの古典や民間説話に取材した創作集『怪談』は文学的芳香の高い作品である。松江市奥谷町に旧居、記念館がある。

[富田 仁]

『平井呈一訳『全訳小泉八雲作品集』全12巻(1964~67・恒文社)』『平川祐弘他訳『ラフカディオ・ハーン著作集』全15巻(1980・恒文社)』『上田和夫訳『小泉八雲集』(新潮文庫)』『『近代文学研究叢書7』(1957・昭和女子大学)』『広瀬朝光著『小泉八雲論――研究と資料』(1976・笠間書院)』『森亮著『小泉八雲の文学』(1980・恒文社)』『平川祐弘著『小泉八雲――西洋脱出の夢』(1981・新潮社)』『銭本健二・小泉凡著『八雲の五十四年――松江からみた人と文学――』(2003・松江今井書店)』

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朝日日本歴史人物事典 「小泉八雲」の解説

小泉八雲

没年:明治37.9.26(1904)
生年:1850.6.27
明治時代の英語教師,文学者,文芸評論家。帰化前の名前はラフカディオ・ハーン(Hearn,Patrick Lafcadio)。父はアイルランド人軍医チャールズ・ブッシュ・ハーン,母はギリシャ人ローザ・カシマチ。ギリシャのリュカディア(レフカス)島生まれ。満4歳のとき父が母を離縁したあとダブリンで大叔母に養育されるが,その大叔母は破産,インドへ行っていた父は帰国途中病死,ハーン自身は寄宿学校在学中事故で左眼失明などの出来事が重なり,1869年,極貧と失意のうちに19歳で渡米した。23歳のときオハイオ州シンシナティで新聞記者として出発,28歳からはニューオーリンズで記者として9年間活躍した。 明治23(1890)年来日。B.H.チェンバレンの紹介で島根県松江市尋常中学校の英語教師となった。その後の熊本五高や帝大への就職もチェンバレンが斡旋,両者の間には往復書簡集がある。松江では同僚の西田千太郎,県知事の籠手田安定ら,理解者に恵まれつつ,古い多神教の世界の出雲に,幻の母の故郷ギリシャを重ね合わせて,深い関心と共感を抱いた。翌年松江藩士の娘小泉セツと結婚,増大した扶養家族を養うためその年末,より高給の熊本五高の教師として赴任。長男一雄の誕生など,日本の家族との絆の強まりは日本への永住帰化を決意させたが,熊本の土地と人には馴染めず,明治27年,外国人居留地の神戸に移り,英字新聞『神戸クロニクル』の記者となる。健康を害してすぐ退社したが,約2年間そこで執筆活動をした。この時期の代表作のひとつ,「日本人の微笑」(『知られぬ日本の面影』所収)は,自我や個性を前面に押し出す近代西欧を正,そうでない日本を負とみる当時の東西比較文化論に,ハーンが真っ向から反論を試みたものである。明治29年に帝大に招かれ,英文学を講じることになる。作品自体の鑑賞を重んじる18,9世紀の英国小説と英詩の平明な講義は学生をひきつけた。教え子に土井晩翠,厨川白村,上田敏。大学の同僚や東京という都市への共感は生じなかったが,晩年8年間の東京生活のなかで,日本文化の根底にある霊的な部分,さらには国家,民族の垣根を超えた文化の本質への理解はいっそう深まり,つぎつぎにすぐれた作品や評論が書かれた。日本の古い物語を再話した数々の怪談からは,死者や死後の世界の持つ力をそのまま受け止めようとするハーンの切実な思いが伝わってくる(『怪談』のほか,『骨董』『日本雑録』などにも所収)。またハーンの眼は人間の魂の世界だけでなく,鳥や木や草や極小の虫の魂にも向かい(『骨董』所収の「草雲雀」),余分の修飾を極力削ぎ落とした文体によって,それらの姿を永遠に書き留めた。狭心症のため死去,雑司ケ谷墓地に葬られた。<著作>『ラフカディオ・ハーン著作集』全15巻,『小泉八雲名作選集』全5巻<参考文献>平川祐弘編『小泉八雲 回想と研究』

(加納孝代)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

20世紀日本人名事典 「小泉八雲」の解説

小泉 八雲
コイズミ ヤクモ
Hearn Lafcadio

明治期の作家,文芸評論家,英語教師



国籍
イギリス

生年
1850年6月27日

没年
1904年9月26日

出生地
ギリシャ・リュカディア島(レフカス島)

本名
Hearn Patrick Lafcadio

主な受賞名〔年〕
熊本県近代文化功労者〔’90年〕

経歴
英国陸軍軍医の父親とシチリア島生まれの娘との間に生まれ、幼い頃父親の生家・アイルランドのダブリンに移った。1869年渡米、シンシナティで苦労しながら新聞記者となる。1876年ニュー・オーリンズに移住。1882年ゴーチェの翻訳を刊行。1884年仏領西インド諸島を取材旅行。1890年ハーパー社の通信員として来日、日本滞在を決意し、B.H.チェンバレンの紹介で島根県立松江中学校の英語教師となる。翌年小泉セツ(節子)と結婚、熊本の第五高等学校に移る。1894年神戸に転じ「神戸クロニクル」論説記者。1896年日本に帰化し、小泉八雲と改名。同年上京、1896〜1903年東京帝国大学英文学講師。’04年早稲田大学に移るがまもなく急逝。古い日本の風俗人情を愛し、「日本―一つの解明」「知られぬ日本の面影」「心」「怪談」「神国日本」「人生と文学」などの作品を通して日本を世界に紹介した。また民間の迷信を熱心に収集、「雪おんな」「耳なし芳一」「ろくろ首」などの怪談を発表した。「小泉八雲全集」(平井呈一訳 全12巻 恒文社)、「ラフカディオ・ハーン著作集」(全15巻 恒文社)がある。’97年故国アイルランドで作家の殿堂入り。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小泉八雲」の意味・わかりやすい解説

小泉八雲
こいずみやくも

[生]嘉永3(1850).6.27. ギリシア,レフカス
[没]1904.9.26. 東京
文学者,随筆家。本名 Lafcadio Hearn。父はイギリス人,母はギリシア人。アメリカに渡って新聞記者生活をおくり,ヨーロッパ文学の新しい潮流をアメリカに紹介,文芸評論家としても活躍。その後『西印度諸島の2年間』 Two Years in the French West Indies (1884) を発表して東洋への関心を深め,1890年来日,島根県松江中学の英語教師となった。同年小泉セツと結婚,日本に帰化し,熊本の第五高等学校講師 (91) ,『神戸クロニクル』紙記者 (94) ,東京大学文学部講師 (96~1903) ,早稲田大学講師 (04) を歴任した。日本の各地を渡り歩いて,『知られざる日本の面影』 Glimpses of Unfamiliar Japan (1894) ,『心』 Kokoro (96) ,『仏の畑の落穂』 Gleanings in Buddha-Fields (97) などで日本の風土と心を紹介する一方,日本の伝説に取材した『怪談』 Kwaidan (1904) で物語作者としての才能も発揮した。彼の愛したのは儒教的礼節,神道的祖先崇拝,仏教的宿命観に裏づけられた前近代的な日本人であったが,絶えず認識を改めつつ東西文化の比較のうえで日本人をとらえ西洋に紹介した功績は大きい。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「小泉八雲」の解説

小泉八雲 こいずみ-やくも

1850-1904 明治時代の随筆家,英文学者。
1850年6月27日ギリシャ生まれ。明治23年(1890)来日,松江中学の英語教師となる。小泉節子と結婚,29年イギリス国籍から日本国籍になる。当時の日本を「知られざる日本の面影」などで世界に紹介。五高,東京帝大や東京専門学校(現早大)でおしえ,上田敏(びん),厨川(くりやがわ)白村らをそだてた。明治37年9月26日死去。55歳。旧名はラフカディオ=ハーン(Lafcadio Hearn)。著作に「怪談」「詩論」など。
【格言など】太陽も月も……空間も時間も――すべては現われては消え行くまぼろしである。ただ,そのまぼろしを作り出すもののみが永遠に存在する(「露のひとしずく」)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「小泉八雲」の解説

小泉八雲
こいずみやくも

1850.6.27~1904.9.26

本名ラフカディオ・ハーンLafcadio Hearn。ギリシア生れのイギリス人。明治期の随筆家・小説家。1890年(明治23)雑誌特派員として来日するが,同年英語教師として松江中学に赴任し,日本文化に関心をもつ。小泉セツと結婚し,熊本の五高へ転任。96年帰化後,上京し東京帝国大学で英文学を講じた。この間「日本瞥見記」「東の国から」などの随筆で,生活に密着した視点から日本を欧米に紹介。1904年アメリカで刊行された「怪談」は,日本の古典や民話などに取材した創作短編集。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「小泉八雲」の解説

小泉八雲
こいずみやくも

1850〜1904
明治時代の小説家・英文学者
本名はラフカディオ=ハーン(Lafcadio Hearn)。ギリシア生まれのイギリス人で,1890年特派記者として来日。同年英語教師として島根県松江中学校に勤め,小泉セツ(節)と結婚した。'96年帰化し,小泉八雲と改名。のち東京大学・早稲田大学の講師となり英文学を講じた。日本文化に関心をもち,日本関係の作品『怪談』など著書多数。

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改訂新版 世界大百科事典 「小泉八雲」の意味・わかりやすい解説

小泉八雲 (こいずみやくも)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「小泉八雲」の意味・わかりやすい解説

小泉八雲【こいずみやくも】

→L.ハーン

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世界大百科事典(旧版)内の小泉八雲の言及

【怪談】より

…ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の短編小説集。1904年アメリカ,イギリスで刊行。…

【ハーン】より

…文芸評論家,小説家。日本名は小泉八雲。ギリシアのレフカス島でイギリス進駐軍の軍医チャールズ・ブッシュ・ハーンと島の女ローザとの間に生まれた。…

※「小泉八雲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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