小牧近江(読み)コマキオウミ

デジタル大辞泉 「小牧近江」の意味・読み・例文・類語

こまき‐おうみ〔‐あふみ〕【小牧近江】

[1894~1978]社会運動家・翻訳家。秋田の生まれ。本名、近江谷こまきフランスで社会主義的な国際平和運動「クラルテ運動」に参加。帰国後、文芸雑誌種蒔く人」を創刊第三インターナショナルを紹介した。

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20世紀日本人名事典 「小牧近江」の解説

小牧 近江
コマキ オウミ

大正・昭和期の評論家,社会運動史家,フランス文学者



生年
明治27(1894)年5月11日

没年
昭和53(1978)年10月29日

出生地
秋田県土崎港(現・秋田市)

本名
近江谷 駒(オウミヤ コマキ)

別名
別名=近江谷 小牧

学歴〔年〕
暁星中学〔大正3年〕中退,パリ大学法学部〔大正7年〕卒

経歴
明治43年16歳のとき父と渡仏、パリ大学に学び、アンリ=バルビュスの“クラルテ運動”に参加。大正8年に帰国し、翌年外務省に入る。10年金子洋文らと「種蒔く人」を創刊、第三インターナショナル(コミンテルン)を日本で初めて紹介した。13年「種蒔く人」廃刊後は「文芸戦線」を創刊してプロレタリア文化運動に画期的な役割を果たす。昭和4〜14年トルコ大使館に勤務。14年インドシナに渡り、印度支那産業取締役を経て、日本文化会館ハノイ事務局長となり、敗戦まで民族解放運動に協力した。戦後は中央労働学院長、法政大学教授を務めた。著書に「フランス革命の父ロベスピエール」「ふらんす革命夜話」「種蒔くひとびと」、小説異国戦争」、自伝「ある現代史」、訳書にバルビュス「クラルテ」「地獄」、シャルル=ルイ・フィリップ「小さな町」などがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「小牧近江」の意味・わかりやすい解説

小牧近江 (こまきおうみ)
生没年:1894-1978(明治27-昭和53)

フランス文学者,社会運動史家。秋田県生れ。本名近江谷駉(おうみやこまき)。1910年16歳で渡仏し苦学してパリ法科大学卒業。当時フランスではH.バルビュスを中心として,平和主義を唱えた社会主義文化運動であるクラルテ運動が広がっていたが小牧はこれに参加し,帰国後の21年に《種蒔く人》を創刊,反戦思想を唱えコミンテルンの紹介をした。アナ・ボル論争の最中にも小牧は両陣営との接触を保って運動の統一を守ろうとし,社会運動と芸術運動の新しい結びつきをつくった同誌からは,プロレタリア文学の新しい作家群が輩出した。同誌廃刊後,24年《文芸戦線》を創刊。第2次大戦中にはインドシナに駐在,戦後は中央労働学院長,法政大学教授となる。訳書にバルビュス《クラルテ》《地獄》,ルイ・フィリップ《小さな町》など,自伝《ある現代史》がある。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小牧近江」の意味・わかりやすい解説

小牧近江
こまきおうみ
(1894―1978)

社会科学者、翻訳家。秋田市土崎港(つちざきみなと)生まれ。本名近江谷駉(おうみやこまき)。東京の暁星中学中退後、代議士の父に伴われて渡仏。1918年(大正7)パリ大学法学部卒業。その間、思想のインターナショナルを叫んだクラルテ運動に参加。日本大使館勤務後帰国し、21年金子洋文(ようぶん)らと土崎版『種蒔(ま)く人』創刊、第三インターナショナルを初めて紹介する。東京で『種蒔く人』再刊後、『文芸戦線』などで無産階級文化運動を推進。第二次世界大戦中はフランス領インドシナにあって民族解放運動にも関係。戦後、中央労働学院長、法政大学教授を務めた。バルビュスの『クラルテ』などの翻訳紹介のほか、『ある現代史』(1965)、『種蒔くひとびと』(1978)などの回想記がある。

[山田俊治]

『『種蒔くひとびと』(1978・かまくら春秋社)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「小牧近江」の解説

小牧近江 こまき-おうみ

1894-1978 大正-昭和時代の評論家。
明治27年5月11日生まれ。近江谷(おうみや)栄次の子。フランスで反戦運動に参加。帰国後,金子洋文らと大正10年「種蒔(ま)く人」を,13年「文芸戦線」を創刊するなど,初期プロレタリア文化運動を推進。昭和26年法大教授。昭和53年10月29日死去。84歳。秋田県出身。パリ大卒。本名は近江谷駉(こまき)。自伝に「ある現代史」,小説に「異国の戦争」。

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367日誕生日大事典 「小牧近江」の解説

小牧 近江 (こまき おうみ)

生年月日:1894年5月11日
大正時代;昭和時代の評論家;フランス文学者
1978年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の小牧近江の言及

【種蒔く人】より

…他に別冊で亀戸事件の記録《種蒔き雑記》等がある。アンリ・バルビュスのクラルテ運動とコミンテルン成立との影響を受けて帰国した青年小牧近江(こまきおうみ)(1894‐1978)を中心に,最初は彼の郷里秋田・土崎で小規模に,のちには東京で反軍国主義とロシア革命の擁護とをかかげ多くの進歩派に呼びかけて思想文学の共同戦線的な雑誌として再出発した。小牧のほかに金子洋文,今野賢三,村松正俊,柳瀬正夢,佐々木孝丸らが中心となり,のち平林初之輔,青野季吉が加わってからは階級運動の一翼としての文学を主張,最初のプロレタリア文学運動の雑誌として注目された。…

※「小牧近江」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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