知恵蔵2010の解説
小説(novel)は「新しい話」の意である、イタリア語のnovellaより。novellaは元来、ボッカッチョ『デカメロン』(1353年)のような短い話を寄せ集めたものを指した。今日的意味での小説は、市民階級の勃興と歩調を合わせて、18世紀イギリスで成立。以後、たちまち世界中に広がり、近現代の最もよく流通した文学ジャンルとなった。しばしば、荒唐無稽な想像力の産物であるロマンスと対比させて、人間や社会を写実的に描いた散文ジャンル、のように定義される。形式、長さ、テーマ設定、叙述法も自由かつ融通無碍(むげ)で、あらゆる内容を盛り込むことができる。それゆえ小説は発生以来、常に小説とは何かを問いながら、映画などの隣接する表現形式と相互に影響し合いつつ、展開してきた。西欧近代社会において、小説は劇、詩、エッセイと並び、文芸の主要4ジャンルを形成する。日本では、明治初期に導入された西洋近代小説の理念と方法は、たちまち他の3ジャンルを圧して王座に君臨、今日に至っている。なお物語(narrative)とは、小説、自伝から民話、伝承に至る、文字通り、物語られるもの全般、を指す。物語の構造・機能の分析・研究を、物語論(narratology)と呼ぶ。
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井上健東京大学大学院総合文化研究科教授
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出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2007」
デジタル大辞泉の解説
しょう‐せつ〔セウ‐〕【小説】
1 《坪内逍遥がnovelに当てた訳語》文学の一形式。特に近代文学の一ジャンルで、詩や戯曲に対していう。作者の構想のもとに、作中の人物・事件などを通して、現代の、または理想の人間や社会の姿などを、興味ある虚構の物語として散文体で表現した作品。
2 《「漢書」芸文志から》市中で口頭によって語られた話を記述した文章。稗史(はいし)。
[類語](1)物語・作り話・創作・稗官(はいかん)・稗史(はいし)・フィクション・ノベル・ロマン
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