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大隅諸島のなかの一島で、大隅半島の先端、
島の気候は地形的特性とも相まって実に複雑である。降水量の多いことはよく知られているが、海岸部の低地でも、年間降水量の平年値は四〇〇〇ミリを超え、内部の高地では二倍以上と推定される。気温は海岸部で年平均摂氏一九度くらいで、最寒月でも一〇度を下ることは少ない。一方中央内部では高度のため、降雪はもちろん積雪もあり、亜熱帯―亜寒帯気候が同居しているといえる。地形・気候条件は植生分布の特色に反映し、おおまかに分類すれば縁辺部の標高二〇〇メートルまではアコウ、ガジマル、ヘゴなどの亜熱帯植生、同二〇〇―八〇〇メートルはクス、シイなどの暖帯林、そこから一六〇〇メートル付近までが屋久杉帯、それ以上はシャクナゲ、屋久笹帯という具合である。
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鹿児島県南部,熊毛郡の町。大隅諸島の屋久島を占める。2007年10月上屋久(かみやく)町と屋久町が合体し成立した。人口1万3589(2010)。
屋久島町北部の旧町。熊毛郡所属。屋久島北部と西方の口永良部(くちのえらぶ)島からなる。人口6813(2005)。屋久島中央部には九州第一の高峰八重岳(宮之浦岳,1936m)をはじめ,標高1000m以上の山が重なり,岩山が海岸近くまで迫って急峻な地形をなす。宮之浦川,一湊川,永田川などの河口に形成された沖積低地と海岸段丘上に集落が立地する。農業は台風常襲地のため防災営農に重きがおかれ,ポンカンなどの果樹,漢方胃腸薬原料のガジュツ,肉用牛などの生産が行われる。林業は屋久杉などの素材生産が主で,造林も進められ,漁業はサバ,カツオ,トビウオなどの水揚げが多い。工業は化学工場のほか,ガジュツを主原料とする製薬工場,屋久杉を加工する工芸品加工業がある。東部の小瀬田には屋久島空港があり,役場所在地の宮之浦には諸官庁の出先機関が集まり,船やバスもここが発着点となっている。口永良部島では放牧やガジュツ栽培が行われるが,過疎化が著しい。屋久島の山岳地帯は霧島屋久国立公園に属し,屋久杉原始林は特別天然記念物,アカコッコ,イイジマムシクイ,エラブオオコウモリは天然記念物に指定されている。
屋久島町南部の旧町。熊毛郡所属。人口6948(2005)。島の北半を占める旧上屋久町との境にある宮之浦岳をはじめ,標高1000mを超える山々が海岸近くまで迫っている。島の周囲は海岸段丘が帯状に連なり,集落は河口付近や段丘上に点在する。亜熱帯の多雨気候を生かした農業が産業の中心で,ポンカンを主とするかんきつ類,エンドウ,茶,薬草のガジュツなどの栽培が盛んである。漁業はトビウオ,カツオ,ブリなどの漁獲が多い。屋久杉は山林の86%を占める国有林に生育し,これを対象とする林業もあるが生産性は低い。木材関連工業や食料品製造業もある。山岳部と海岸の一部は霧島屋久国立公園に属し,栗生(くりお)川上流域は原生自然環境保全地域に指定されている。湿原の花之江河(はなのえごう),ヤクスギランド,千尋(せんぴろ)滝,大川(おおこう)之滝,尾之間(おのあいだ)温泉,平内や湯泊の波打ちぎわの露天ぶろ,熱帯果樹園,亜熱帯植物園などの観光地がある。
執筆者:赤池 享一
鹿児島県南部,大隅諸島中の島。大隅半島の南端から南へ約60km,種子島の南西約20kmに位置し,面積503km2,周囲約105kmの五角形状の島である。熊毛郡に属し,2007年10月合併により屋久島町が成立した。人口約1万3589(2010)。古第三紀層とそれを貫く花コウ岩層からなる高峻な島で,最高所は九州一の標高をもつ宮之浦岳(1936m)。これを取り巻くようにして永田岳(1886m),黒味岳(1831m)などがあり,いわゆる八重岳を構成している。
《日本書紀》に,616年(推古24)掖玖(やく)人が大和朝廷に入貢したとあるのが,屋久島が記録に登場する初めであり,以後遣唐使船や海上交通の要地として利用された。中世,島津氏の支配下に入り,一時は種子島氏に治められたが,1612年(慶長17)以降島津氏の直轄領となり,奉行が置かれた。島の90%が山林,そのうち80%が国有林である。農業は,ポンカン,タンカンなどのかんきつ類,エンドウなどの園芸作物,ガジュツ(ショウガ科。漢方で根茎を健胃剤とする)の栽培と加工などが行われる。漁業はトビウオやカツオを主とする。降水量が多いため水力発電に適するが,島外への送電はできない。
島周辺の低地は,年平均気温20℃前後で温暖であり,サンゴ礁も見られ,ガジュマル,アコウ,クワズイモなどが育つ。また降水量も多く,平地で年間4000mm内外,山地では8000mmを超えるところもある。このため山岳地帯では高度による植物相の変化に特徴があり,標高700~1000m以下はクス,カシなどの照葉樹林帯,1500mあたりまでは屋久杉帯,これを越えるとヤクザサ帯となる。屋久杉はとくに有名で,樹高20m,直径1~2mに達するものが9割を超す。樹齢300年以下のものは屋久杉とはいわず,コスギと呼ばれる。屋久杉の巨木の中には,樹齢2800年の白谷大杉,根回りが32.5mのウィルソン杉,42mの大王杉,43mの縄文杉などがあり,木目が美しいので高級建築材ばかりでなく工芸品用材としての価値も高い。これらは宮之浦川支流の白谷川渓谷にある自然観察林や,東岸の安房(あんぼう)から16kmの屋久杉ランドなどで見ることができる。屋久杉原始林は特別天然記念物に指定されている。標高1600m付近の花之江河(はなのえごう)は高所湿原として貴重である。動物種も数が多く,ヤクシマザルやヤクシカなどの著名なもののほか,アカヒゲ,ツマベニチョウ,キリシマミドリシジミ,ツグミの1種のアカコッコ(天)などが生息する。1993年12月,屋久島は世界自然遺産に登録された。
自然に恵まれた優れた観光地で,尾之間(おのあいだ)温泉,湯泊温泉などもある。鹿児島港から定期船で約4時間,ジェットフォイルで2時間半,鹿児島空港からの航空路(40分)もある。
執筆者:服部 信彦
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鹿児島県佐多岬の南約60キロメートルの洋上(北端が北緯30度30分付近)に位置する、ほぼ円形の島で大隅諸島(おおすみしょとう)の1島。面積504.88平方キロメートル。最高点は宮之浦岳(みやのうらだけ)の1936メートル、九州の最高地点である。鹿児島県熊毛(くまげ)郡屋久島町に属する。東方20キロメートルにある種子島(たねがしま)が細長い低平な地形であるのとは対照的に、本島には1000メートルを超す山峰が30座以上もあり、急峻(きゅうしゅん)な地形の山岳島である。北西部の一部を除き島の周囲には基盤をなす熊毛層群(白亜紀から古第三紀)や段丘堆積(たいせき)物がみられるが、内側の山地はすべて貫入した花崗(かこう)岩類で覆われる。種子島との地形・地質上の相違はこの貫入岩の有無に起因する。本島の気候は、これら地形的特異性と相まって複雑である。降水量の多いことはよく知られ、海岸部の平年値でも4000ミリメートルを超える。内部の高地では、その2倍以上とも推定される。これは「屋久島では月に33日雨が降る」という俗諺(ぞくげん)に言い表されるように、降水日数の多いことによる。山と水の島とよぶにふさわしい。気温は、海岸部では年平均19℃ぐらいで最寒月でも10℃を下回る日は少ない。しかし、内部ではその高度のため降雪や積雪もある。これら地形や気候条件により、植生分布に著しい特色がある。縁辺の200メートルまでは、アコウ、ガジュマル、ヘゴなどの亜熱帯植生、200~800メートルは、クス、シイなど暖帯林、そこから1600メートルまでがヤクスギ帯、それ以上がシャクナゲ、ヤクザサ帯となっている。農業は縁辺部の海岸段丘上で行われ、サトウキビ、サツマイモ、タンカン、ポンカンなどの柑橘(かんきつ)類、ガジュツなどが栽培される。集落は、島の内部が国有林であるため、すべて海岸部に分散立地する。人口1万3375(2009)。屋久島国立公園に属し、動・植物相の観賞や登山を目的とする観光客が多い。鹿児島市から毎日船便があり飛行機も利用できる。
[塚田公彦]
屋久島には亜熱帯から亜寒帯にわたって生育する多様な植物群落が一定の垂直分布を示しながら凝集している。多量の降水量と花崗岩起源の貧養性の母岩(ぼがん)のため、中腹以上には針葉樹林がよく発達し、なかでも樹齢2000年以上ものヤクスギの自然林(タカサゴシダ‐スギ群集他)の生育はきわめて顕著である。さらに高海抜地にはヤクシマシャクナゲ、ヤクシマダケ、イッスンキンカといった同島固有の群落が発達している。「屋久島スギ原始林」は特別天然記念物。なお、屋久島は1993年(平成5)、世界遺産の自然遺産として登録されている(世界自然遺産)。また、屋久島北西部の永田浜は、2005年にラムサール条約登録湿地となった。
[奥田重俊]
『日下田紀三著『屋久島の自然』(1984・八重岳書房)』▽『松田幸治著『屋久島――自然と文化』(1985・南国出版)』
鹿児島県熊毛郡(くまげぐん)にある町。鹿児島県佐多岬の南約60キロメートルの洋上に位置する屋久島と同島の西方にある口永良部島(くちのえらぶじま)を町域とする。2007年(平成19)上屋久町と屋久町が合併して成立。屋久島は九州最高峰の宮之浦岳(みやのうらだけ)(1936メートル)をはじめ1000メートルを超す山々が連なる。口永良部(くちえらぶ)島は面積約36平方キロメートルの活火山島で、最高点は657メートルの古岳(ふるだけ)。屋久島の24集落、口永良部島の2集落からなる。黒潮からの水蒸気が高山の上で厚い雲となり、大量の雨を降らせる。雨水はいくつもの急流となり、滝をつくりながら海に流れ込む。各集落は、これら河川の扇状地や狭い海岸段丘上に点在。現在は海沿いの県道で結ばれているが、以前は、船に乗らなければ行けないところもあり、それだけに集落独自の文化が残される。かつては山への信仰行事である「岳参り」が各集落をあげて行われたが、現在は地域小・中・高の学校登山行事などとして受け継がれる。屋久島東部の長峰(ながみね)にある屋久島空港から、鹿児島、大阪、福岡へ定期便が運航。北部の宮之浦港からは鹿児島、種子島、口永良部島と結ぶ定期船、東部の安房(あんぼう)港からは種子島、鹿児島と結ぶ定期船が就航。おもな産業は、豊かな自然を利用した観光業と農業で、屋久島ではポンカンやタンカンなど柑橘(かんきつ)類の栽培が盛ん。また漁業や土埋木(どまいぼく)を利用した木工業、豊かな水資源を活用した発電事業、電熱化学工業なども行われている。屋久杉とよばれるスギの原生林は、国の特別天然記念物に指定され、ウミガメの産卵地として知られる永田浜(ながたはま)は、ラムサール条約登録湿地。屋久島の約4割が屋久島国立公園の指定域で、1993年(平成5)にはユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録された。面積540.48平方キロメートル、人口は1万1858(2020)。
[編集部]
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