岸姫松轡鑑(読み)きしのひめまつくつわかがみ

精選版 日本国語大辞典 「岸姫松轡鑑」の意味・読み・例文・類語

きしのひめまつくつわかがみ【岸姫松轡鑑】

浄瑠璃時代物。五段。豊竹応律、若竹笛躬(ふえみ)福松藤助らの合作。宝暦一二年(一七六二)大坂豊竹座初演。北条時政陰謀に反抗する朝比奈三郎と、源頼朝に滅ぼされた源範頼の娘とを中心にして脚色三段目朝比奈上使」が有名。略称岸姫

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「岸姫松轡鑑」の意味・わかりやすい解説

岸姫松轡鑑 (きしのひめまつくつわかがみ)

人形浄瑠璃。時代物。5段。通称《岸姫》。豊竹応律,若竹笛躬,福松藤助,浅田一鳥,黒蔵主,並木永輔の合作。1762年(宝暦12)閏4月大坂豊竹座初演。おもな配役は二段目奥を豊竹鐘太夫,三段目詰を豊竹若太夫,四段目詰を豊竹駒太夫その他。人形は時政を若竹東工郎,司姫(つかさひめ)を笠井音五郎,朝比奈を若竹伊三郎その他。北条家と源家との紛争を題材とする。三段目詰〈朝比奈上使〉は《御所桜堀川夜討》の三段目切〈弁慶上使〉と《花系図都鑑》の七段目〈舟岡館〉とを取り合わせて趣向をこらした翻案。北条時政は頼家の子を懐妊した司姫を殺して頼家の血統を断つため,朝比奈に命じ姫の乳人飯原(いいばら)兵衛の館へ行かせる。偶然にも館には死んだはずの飯原の娘が訪ねてくる。しかもその娘と以前契った男が使者の朝比奈と判明し,朝比奈は司姫の身代りとして,その娘の首を持って帰る。歌舞伎に入ったのは1860年(万延1)正月江戸守田座《百鵆賑曾我(ももちどりにぎわいそが)》の名で演じたのが最初。朝比奈を初世片岡市蔵,粧姫(よそおいひめ)(司姫)を3世沢村田之助,時政を初世中村歌雀ほか。この期の人形浄瑠璃は太夫や舞台の著しい技巧化に伴い複雑な趣向に趣向を重ね,奇を競ったが,本作の三段目〈朝比奈上使〉のような趣向も観客の意表をつく表現となり,よくその特徴を示している。この三段目だけは現在も人形浄瑠璃,歌舞伎ともに《朝比奈上使》の通称で舞台生命を保っている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「岸姫松轡鑑」の解説

岸姫松轡鑑
きしのひめまつ くつわかがみ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
豊竹応律 ほか
初演
明治3.11(大阪・中の芝居)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報