帰化(読み)きか(英語表記)naturalization
naturalisation[フランス]
Einbürgerung[ドイツ]

精選版 日本国語大辞典 「帰化」の意味・読み・例文・類語

き‐か ‥クヮ【帰化】

〘名〙 (「帰」は帰服、「化」は徳化の意)
① 王化に帰服すること。教化に従い服従すること。朝廷の支配下にはいること。
令義解(718)職員「帰化 〈謂。遠方之人欽化内帰也〉」
② 本人の希望により、新しく他国の国籍を取得すること。外国人が日本に帰化するには、引き続き五年以上日本に住所をもち、なお居住する意思があり、かつ一定の条件に合った者に対し、法務大臣が許可している。
西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉初「外人帰化の法を廃して其移住を禁じ」
原産地から他の地域に運ばれた生物が、新しい環境に順応してその土地に根をおろし、野生状態で繁殖すること。「帰化植物
④ (比喩的に) ある事柄主義、人物などに傾倒すること。なびくこと。
東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉五「之を視て万機能く一新美風に帰化す可き也」

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デジタル大辞泉 「帰化」の意味・読み・例文・類語

き‐か〔‐クワ〕【帰化】

[名](スル)
他国の国籍を得て、その国民となること。「日本に帰化する」
生物が原産地から他地域に運ばれ、新しい環境に適応して生存・繁殖するようになること。
[類語]生息群棲移入巣くう巣立ち回遊

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改訂新版 世界大百科事典 「帰化」の意味・わかりやすい解説

帰化 (きか)
naturalization
naturalisation[フランス]
Einbürgerung[ドイツ]

一定の条件を具備する者の志望に基づいて,国家がこれに国籍を取得せしめること。今日,いかなる国の国籍立法でも,帰化を認めないものはない。国籍の得喪に関してなるべく個人の自由意思を尊重すべきであるとする国籍自由の原則の一つの表れである。古代には帰化はきわめてまれであったが,19世紀後半以来ヨーロッパ諸国から南北アメリカに移住する者が現れるにいたり,以後諸国において頻繁に認められるにいたった。日本において帰化の歴史を考えるとき,まず思い浮かぶのが古代における渡来人帰化人)であるが,これは事実上中国人,朝鮮人のみであった。1899年に制定された日本の旧国籍法は帰化について人種,宗教のいかんを問わない立場を採った。しかしアメリカは従来,帰化について人種的差別主義をとり,1802年,42年および70年の法律はいずれも東洋人に帰化資格を与えなかったが,1943年の法律により中国人にもこれを与え,さらに50年いわゆるマッカラン法の制定により日本人の帰化も認められるにいたった。アメリカのこのような帰化に関する人種的差別主義は,諸国の帰化の歴史上,きわめて特異で注目に値すべきものである。

 ひとたび喪失した旧国籍を再び取得する国籍の回復も法的には帰化の一種で,再帰化とも呼ばれる。1950年制定の国籍法の一部を改正した新国籍法(1984年公布,85年施行)には国籍の回復という言葉はないが,実質的にこれに相当する規定はある(8条3号)。諸国の国籍立法のうちには,アメリカのように,帰化の条件を具備する外国人は当然に帰化する権利を有し,一定の裁判所がその条件を判定するにすぎないとするものもあるが(1952年の移民及び国籍法310条以下),多くの国は帰化の条件を具備する外国人に対しても当然には帰化の権利を認めず,帰化を許可するか否かはもっぱら国家の自由として行政機関の権限に属するものとしている。日本の国籍法も後者の立場を採り,帰化を法務大臣の自由裁量に属せしめている。かような帰化の不許可処分が抗告訴訟の対象となるか否かについて,日本では従来これを否定する説が主張されてきたが,最近では肯定する説がむしろ有力である。なお,上述の帰化とは別に,取得しようとする国籍の所属国と当事者が一定の特別な関係にある場合に,志望者の意思だけに基づいて国籍の取得を認める制度がある。1945年のフランス国籍法中の国籍取得の意思表示,81年のイギリス国籍法における登録による簡易な国籍の取得がこれにあたり,日本の国籍法も届出による国籍の取得の場合を定めている(3条,17条)が,これらは帰化とは異なる。

 帰化の条件は各国が国籍法によって定めているが,その内容は千差万別である。また一国の国籍法においても,帰化の種別により条件に差異が認められる。日本の国籍法は普通帰化と特別帰化とを認めているが,帰化条件はそれぞれ異なる。普通帰化とは一般の外国人の場合の帰化をいい(5条),特別帰化は簡易帰化とも称し,血縁,地縁その他なんらかの意味で日本と密接な関係のある外国人につき,普通帰化のときに要求される条件が緩和または免除される場合の帰化をいう(6~9条)。国籍法は,普通帰化につき,外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において,日本国民との親族関係または境遇につき特別の事情があると認めるときは,その者が重国籍防止条件(5条5号)を備えないときであっても帰化を許可することができるとしている(5条2項)。そして,日本国民の配偶者の帰化条件に関し男女の差異を解消するとともに(7条),日本で生まれた者が無国籍のままであるケースをできるだけ解消するためその者も特別帰化の対象としている(8条4号)。日本に特別の功労のある外国人につき法務大臣が国会の承認を得てその帰化を許可する制度がある(9条)。これも特別帰化の一つであり,大帰化grand naturalizationと呼ばれる。帰化の許可の申請は帰化しようとする者が15歳未満であるときは,法定代理人が代わってする(18条)。また法務大臣が帰化を許可したときは《官報》にその旨を告示しなければならず,帰化はその告示の日から効力を生じる(10条)。帰化により日本国籍を取得した者は,生来の日本国民とまったく区別されない。日本への帰化が増大したのは1952年以降であり,1990年までの帰化許可者の総数は20万余を数えるにいたったが,その大部分は韓国人・朝鮮人および中国人の帰化者が占めている。とくに最近,帰化者が増加しているのは,在日韓国人・朝鮮人のほかに,日本の国際化に伴い急増した定住外国人(主として2世,3世)や日本に永住帰国した中国残留邦人およびその親族の帰化事件が増加していることによるものである。
国籍
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「帰化」の意味・わかりやすい解説

帰化
きか
naturalization

個人の意思により国籍を取得すること。自国の国籍を有しない者に対していかなる要件で国籍取得を認めるかについては、各国の法政策により大きく異なる。

 日本の国籍法では、申請者の資格に応じて、普通帰化(同法5条)、簡易帰化(同法6・7・8条)、大帰化(同法9条)の三つに分けて帰化条件を定めるとともに、外国人の申請に対する帰化の許可を法務大臣の裁量にゆだねている(同法4条)。

 普通帰化は、(1)引き続き5年以上日本に居住すること、(2)18歳以上で、本国法による行為能力者であること、(3)素行が善良であること、(4)自己または配偶者その他の親族によって生計を営むことができること、(5)国籍を有しないか、日本の国籍の取得によりその国籍を失うべきこと、(6)日本国憲法施行日以後に日本政府等を暴力で破壊することを企てる等の行為をしていないこと、などの要件を必要とする(国籍法5条1項各号)。ただし、(6)の要件は、徴兵制度等のために外国国籍を離脱できないこともあることから、特別の事情が認められれば障害事由としないとされている(同法5条2項)。簡易帰化は、日本国民の子などについて、前記の居住要件や年齢要件などを緩和したものであり、大帰化は、日本に特別功労のある外国人について、国会の承認を得て許可されるものである。帰化とは別に、国籍留保の意思表示をしなかったため日本国籍を失った者が、法務大臣への届出による日本国籍の再取得が認められている(同法17条)。

[道垣内正人 2022年4月19日]

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普及版 字通 「帰化」の読み・字形・画数・意味

【帰化】きか(くわ)

徳化に帰する。〔後漢書、循吏、童伝〕一靜にして、牢獄年囚無し。比縣の人、歸して徙居するもの、二なり。

字通「帰」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「帰化」の意味・わかりやすい解説

帰化
きか
naturalization

自己の志望によって後天的に特定の国の国籍を取得し,その国の国民となること。(1) 帰化の要件については国によって異なるが,日本の国籍法によれば法務大臣の許可が必要とされ,許可条件として引き続き 5年以上日本に住所を有し,18歳以上で本国法によって能力を有し,素行が善良であり,また重国籍者にならないこと等が定められている(4,5条)。もっとも一定の場合にはその要件は緩和され(簡易帰化。6~8条),また,日本に特別の功労のある外国人については,法務大臣が,国会の承認を得て帰化を許すことができるとされている(大帰化。9条)。(2) 再帰化 renaturalization 一度喪失した旧国籍を再取得すること。国籍の回復ともいう。再帰化は元来自国民であった者に対する制度であるので,元来外国人である者が帰化によって自国籍を得たのちにそれを喪失した場合には適用されない。再帰化の要件は通常の帰化の場合よりも緩和されるのが通例である(国籍法8条3号)。

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百科事典マイペディア 「帰化」の意味・わかりやすい解説

帰化【きか】

自己の志望によって国籍を取得すること。申請に基づき,一定の条件を備えた場合に許可される。日本の国籍法は,引き続き5年以上日本に住所をもち,20歳以上で本国法によって能力をもち,素行善良で独立の生計を営むことができ,日本国籍の取得によって本国国籍を失うことに同意し,暴力主義的破壊団体に所属したことがないなどを条件としている。ただし日本国民の妻・夫・子などに対してはもっとゆるやかな条件で帰化を認める。なお日本国民が外国に帰化したときは日本国籍を失う。
→関連項目無国籍児

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世界大百科事典(旧版)内の帰化の言及

【国籍】より

…すなわち,子は,(a)出生の時に父又は母が日本国民であるとき,(b)出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であったとき,(c)日本で生まれた場合において,父母がともに知れないとき,又は国籍を有しないときに限り,日本国籍を取得するものとしている(2条)。(2)帰化による国籍の取得 一般には一定期間の居住その他,法定の条件を備えた外国人の志望に基づいて,国家がこれに国籍を付与することを帰化というが,日本の国籍法も帰化を認め,その条件について規定している。帰化は,その条件の寛厳の差異により,普通帰化と特別帰化に区別される。…

※「帰化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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