家庭医学館 「帽状腱膜下出血」の解説
ぼうじょうけんまくかしゅっけつ【帽状腱膜下出血 Subaponeurotic Hematoma, Subgaleal Hemorrhage】
帽状腱膜は頭皮(とうひ)の下にあり、頭蓋骨(ずがいこつ)を帽子のように包んでいる組織です。吸引分娩(きゅういんぶんべん)や鉗子分娩(かんしぶんべん)の際に大きな外力が頭皮にかかると、この帽状腱膜と骨膜の間に出血がおこることがあります。これが帽状腱膜下血腫です。
[症状]
出産直後はわかりませんが、生後数時間から1日のうちに出血がすすみ、頭の皮下が腫(は)れてきます。血液がにじむため、皮膚の色は暗赤色にみえます。腫れは頭蓋骨の骨縫合(こつほうごう)(骨の継ぎ目)をこえて広がり、頭の大きさがひとまわり大きくなったようにみえることがあります。
貧血やショック状態におちいることもあるため、早く症状に気づくことがたいせつです。また、大量出血のために播種性血管内血液凝固症候群(はしゅせいけっかんないけつえきぎょうこしょうこうぐん)をおこし、出血が止まらなくなって死亡する可能性もあります。さらに、大量の血液の破壊と吸収は強い黄疸(おうだん)をおこす原因にもなります。
[治療]
出血による貧血に対しては輸血が必要です。ショック状態となり、血圧低下や二次的な全身状態の悪化をおこした場合は輸液や昇圧薬などによる薬物療法が行なわれます。
黄疸には光線療法のほか、ときには交換輸血が必要です(コラム「新生児黄疸」)。