床しい(読み)ユカシイ

デジタル大辞泉 「床しい」の意味・読み・例文・類語

ゆかし・い【床しい/懐しい】

[形][文]ゆか・し[シク]《動詞「行く」の形容詞化。心ひかれ、そこに行きたいと思う意。「床」「懐」は当て字
気品情趣などがあり、どことなく心がひかれるようである。「―・い人柄」「古都の―・い風情
なつかしく感じられる。昔がしのばれるようすである。「古式―・い祭礼
好奇心がそそられる。見たい、聞きたい、知りたい、欲しいなどの気持ちを表す。
「五人の中に、―・しき物を見せ給へらむに」〈竹取
[派生]ゆかしがる[動ラ五]ゆかしげ[形動]ゆかしさ[名]
[類語]奥ゆかしい恋しい懐かしい物懐かしい慕わしい優雅優美高雅典雅風雅優形やさがた上品しとやかたおやかみやびやかみやび女性的エレガントドレッシー女らしい女女めめしい女くさい女振り女っ気婉麗えんれい優優典麗麗しい静淑優婉閑雅婉然楚楚そそ窈窕ようちょう端麗温雅物柔らか気高い気品雅趣高尚つつましいつつましやかしおらしい清雅高踏雅致﨟長ろうたけるみやびる端雅都雅やんごとない高貴

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精選版 日本国語大辞典 「床しい」の意味・読み・例文・類語

ゆかし・い【床・懐】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]ゆか〘 形容詞シク活用 〙 ( 動詞「ゆく(行)」の形容詞化。心ひかれ、そこに行きたいと思う意。「床」「懐」はあて字 )
  2. それに心がひかれ、実際に自分で接してみたいという気持を表わす。
    1. (イ) どんな様子か見たい。行って、それを見たい。また、心ひかれている人に、会いたい。
      1. [初出の実例]「五人の中に、ゆかしき物をみせ給へらんに、御心ざしまさりたりとてつかうまつらん」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. (ロ) 何であるか知りたい。誰であるか知りたい。どんな様子や状態か知りたい。
      1. [初出の実例]「四位にもなるべき年にあたりければ、むつきの加階たまはりの事、いとゆかしうおぼえけれど、京よりくだる人もをさをさきこえず」(出典:大和物語(947‐957頃)四)
      2. 「いかなるひさごのいかになびくならむと、いみじうゆかしくおぼされければ」(出典:更級日記(1059頃))
    3. (ハ) 演奏、声などを聞きたい。
      1. [初出の実例]「琴は習はしたてまつり給はざりければ、この折をさをさ耳なれぬ手ども弾き給ふらんを、ゆかしとおぼして」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    4. (ニ) 人や物を、自分のものにしたい。欲しい。
      1. [初出の実例]「これもよも忘れ侍らじ、又もゆかしう侍り」(出典:落窪物語(10C後)二)
  3. なつかしい。恋しい。慕わしい。
    1. [初出の実例]「恋しとよ君恋しとよゆかしとよ、逢はばや見ばや見ばや見えばや」(出典:梁塵秘抄(1179頃)二)
    2. 「むかしの名残もさすがゆかしくて、手なれし琴をひく程に、やすうもきき出されけりな」(出典:平家物語(13C前)六)
  4. 情趣や気品、優美さなどがあって何となく心がひかれる。上品で深みがある。
    1. [初出の実例]「山路来てなにやらゆかしすみれ草」(出典:俳諧・野ざらし紀行(1685‐86頃))
    2. 「さすが唄女(げいしゃ)となりぬれど、元は医学(くすし)の娘にて〈略〉昔が知れてゆかしけれ」(出典人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)三)

床しいの派生語

ゆかし‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙

床しいの派生語

ゆかし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

床しいの派生語

ゆかし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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