後戸(読み)しりつと

精選版 日本国語大辞典 「後戸」の意味・読み・例文・類語

しり‐つ‐と【後戸】

  1. 〘 連語 〙 ( 「つ」は「の」の意の助詞 ) 建物後方戸口。裏の戸口。
    1. [初出の実例]「御真木入日子はや 御真木入日子はや 己が命(を)を 盗み死せむと 斯理都斗(シリツト)よ い行き違(たが)前つ戸よ い行き違ひ」(出典:古事記(712)中・歌謡)

うしろ‐ど【後戸】

  1. 〘 名詞 〙 後ろにある戸。後方の出入り口。特に、仏殿須彌壇(しゅみだん)の後方にある戸。本堂の後ろ側にある戸口で、裏堂、後堂の出入り口。
    1. [初出の実例]「かの会の講師、〈略〉後戸よりかい消つやうにしていづること」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)八)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「後戸」の意味・わかりやすい解説

後戸 (うしろど)

仏堂の背後入口のこと。この入口は本尊の背後にあることから宗教的な意味をもち,後戸を入った正面に本尊の護法神やより根源的な神仏を安置する。例えば東大寺法華堂の執金剛神,二月堂の小観音(こかんのん),常行堂摩多羅神(まだらしん)などがその典型。法会儀礼のなかで後戸の神をまつる呪法は芸能化し〈後戸の猿楽〉という呼称が示すように中世芸能誕生の舞台となった。能楽の翁を後戸の神(宿神守宮神)といい修正会(しゆしようえ)などの延年に登場するが,古来,修正会に後戸から鬼が出現するのもまた普遍的であり,ともに後戸の宗教性を象徴している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

発見学習

発見という行為の習得を目指す学習。または,発見という行為を通じて学習内容を習得することを目指す学習。発見学習への着想は多くの教育理論に認められるが,一般には,ジェローム・S.ブルーナーが『教育の過程』...

発見学習の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android