神社の祭礼のとき,神輿(みこし)(あるいは神幸船)が渡御(とぎよ)して一時安置される場所のこと。御輿宿,頓宮ともいう。《枕草子》に平野社の〈みこしやどり〉が出るのをはじめとして,《兵範記》仁平3年(1153)4月15日条の〈先参御輿旅所〉など,平安末~鎌倉初の記録に,宇治離宮明神,祇園,稲荷,松尾,北野の各社の祭礼に設けられた旅所のことが現れる。一般に神社の神幸(渡御)というものは,(1)鎮座伝承上ゆかり深い地点への神幸,(2)祭神事績・霊験への回顧のための神幸,(3)氏子区域の巡覧・除厄など種々の理由があるため,旅所もまた1ヵ所または数ヵ所にわたることがある。京都七条西大宮の松尾社旅所にて7日間神事能が行われたこと,松尾社・稲荷社も旅所への渡御を〈おいで(御出)〉と呼ぶこと,近江日吉社の祭りに唐崎の一つ松のところで供御(くご)を受けること,近江馬淵の馬見岡神社の祭りにレツケイズ(列見場か)に神幸あって6座の宮座饗宴を行うことなどの例を考えると,旅所はほんらい神の降臨を仰いで祭儀を行う場所そのものであったかとも考えられる。
→還幸祭 →神幸祭
執筆者:萩原 龍夫
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…《太平記》には〈宿院の後を廻て如法経塚へ押寄,八百人の兵共,同音に時をどっと作る〉とみえている。また,神社の祭礼のとき,神輿を本宮から渡御して,かりにとどまるところ,すなわち御旅所なども宿院といわれていたかと思われる。和泉国に宿院という地名があるが(現,大阪府堺市宿院町),《堺鑑》によると〈宿院 此地は住吉明神毎年六月晦日の御祓,御旅所也〉とある。…
※「御旅所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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