デジタル大辞泉
「怒」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
いか・る【怒】
〘自ラ五(四)〙
① 自分の意に反するものの存在によって感情がいらだち荒れる。おこる。いきどおる。立腹する。
※石山寺本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「其の
賊将を別の処に曳
(ひ)き、恠りて慍
(イカリ)て云はく」
※源氏(1001‐14頃)
紅葉賀「ただいみじういかれる気色にもてなして
太刀を引き抜けば」
② 荒々しくふるまっておどす。にらみつける。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「
阿修羅いかれる
かたちをいたして」
③ 物の形状が角立つ。ごつごつする。そびえる。
※源氏(1001‐14頃)常夏「いと草(さう)がちにいかれる手の」
※ごりがん(1920)〈上司小剣〉五「いかった肩には骨が露(あら)はに突っ立ってゐる」
④ 勢いはげしく動く。たけだけしくふるまう。
※源氏(1001‐14頃)
帚木「荒海のいかれる魚の姿」
[
語誌](1)中古での
用法では、「切り殺す」などの行動につながる激しい「怒り」を表わす。類義のイキドホルが
心中にとどまって
他者にぶつけられることのない「怒り」を表わすのと異なる。
(2)和文では、
イカルとほぼ同義の語としては、ハラダツが用いられた。院政期以後には、イカラス・イカラカスといった「怒り」の
表情・
形相を表わし、またそれを強める語も生まれた。
いかり【怒】
① 自分の望む方向に反するものの存在によって起こされた感情のいらだち。おこること。はらだち。立腹。いきどおり。
※書紀(720)推古一二年四月(岩崎本訓)「忿(こころのイカリ)を絶(た)ち、瞋(おもへりのイカリ)を棄てて」
※源氏(1001‐14頃)
夕霧「人の御いかり出で来なば永きほだしとなりなむ」
② 肩などが角ばっていること。ものの角ばった部分。また、鼻の穴のふくらみが左右に広がっていること。いかっていること。
※清原宣賢式目抄(1534)一〇条「楚〈略〉長さ三尺五寸、ふしをもいかりをも削すつ」
いから・す【怒】
〘他サ五(四)〙
① 相手をおこるようにしむける。おこらせる。
※羅葡日辞書(1595)「
Acuo〈略〉Icarasu
(イカラス)、イカリヲ オコサスル」
② かどばった動作でいかめしい様子をする。いから
かす。多く、肩をそびやかす、目を大きく見開く、声を張り上げるなどの場合に用いる。
※書紀(720)仁徳五五年(前田本訓)「大蛇ありて目を発瞋(イカラシ)て」
おこ・る【怒】
〘自ラ五(四)〙
① いかる。腹を立てる。興奮して気が荒くなる。
② しかる。
※嬰児ごろし(1920)〈
山本有三〉「
年中おこられたり、おどかされたり」
[語誌]
現代語では「いかり」を表わす語として最も一般的だが、
成立は近世後期になってからと考えられる。「カッとなる」「熱くなる」「
烈火のごとく」などの
表現は、激しい「おこり」が「火・熱」を連想させたことを示唆している。
おこり【怒】
〘名〙 (動詞「おこる(怒)」の連用形の名詞化)
① おこること。いかり。立腹。
※
たけくらべ(1895‐96)〈
樋口一葉〉七「他の人ならば一通りの怒
(オコ)りでは有るまじ」
※雑俳・玉の光(1844‐45)一「うるさやの・おこりのくせに梯子じゃナア」
ぬ【怒】
〘名〙 仏語。三毒の一つ。いかり。瞋(しん)。瞋恚(しんい)。〔維摩経‐上〕
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