精選版 日本国語大辞典 「情報」の意味・読み・例文・類語
じょう‐ほう ジャウ‥【情報】
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
翻訳|information
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〈情報〉という語は,広義にはニュースや知識を指すのにも用いられているが,厳密には,人間を離れて客観的に伝達・処理ができるようになった段階でのそれをいう。その伝達や処理は元来は人間が担っていたものであるが,技術発達の過程で,材料加工から〈物質〉の概念が生まれ,原動機の開発から〈エネルギー〉の概念が生まれたように,通信技術やコンピューターや自動制御の発達の結果,新しく〈情報〉の概念が形成されたのである。情報を生産したり伝達したりするのは制御のためであり,利用しやすくするために保存(記録・記憶)や加工(情報処理)も行われる。現代的意味での情報の特徴は,その表現形式と意味内容が分離されうることである。20世紀初頭すでにソシュールが言語を記号と見,能記(シニフィアンsignifiant,意味するもの)と所記(シニフィエsignifié,意味されるもの)を区別していたが,数学や工学では意味内容は一般的な扱いができないのでこれを捨象し表現形式のみを扱う。このように意味内容(メッセージ)を切り離して符号(コード)のみを取り上げた場合の情報を〈技術的情報〉という。
技術的情報は符号の組合せであって一般的にいえば〈パターン〉である。情報伝達(通信)や情報処理で扱われる情報はこのパターンで,量的に規定することができる。1928年にベル電話研究所のハートリーR.V.Hartleyが,n個の区別しうる状態をもつ記憶装置はlognの〈情報容量C〉をもつと定義し,これで測られる量を〈情報information〉と呼んだ。これが技術的情報概念の最初の規定である。しかし同じ容量をもっていても,区別されない符号が並んでいるのと区別されるものが特定の順序で並んでいるのとでは情報の量が異なる。ハートリーは〈心理的要素を考慮に入れてきめなければならない〉として〈情報量〉の規定を避けたが,シャノンC.E.Shannonは48年,確率pの状態にある情報量Cを-log pで定義した。これだと,確率が小さいほど情報量が大きいという心理的事実と合うのである。この定義によれば-符号あたりの平均情報量Hはとなり,熱力学でいうエントロピーと同じ形をしているので〈エントロピー〉と呼ばれる。ただし熱力学の場合と異なり負号がついているので〈負エントロピー(ネゲントロピーnegentropy)〉ということもある。統計力学でいうエントロピーが〈無秩序性の測度〉であるのに対し,情報のエントロピーは負なので情報は〈秩序性の測度〉といってもよい。このように量的に定義されることによって,情報のノイズやフィルタリングの問題が解けるようになり,代数学を用いた符号化の理論もできた。技術的情報は符号の系列であるから,情報をベクトルと考えヒルベルト空間の点とみなして幾何学的に扱う信号空間の理論もある。さらに,53年にDNAの二重らせん構造を提案したJ.D.ワトソンとF.H.C.クリックは,ガモフの示唆により遺伝が情報の伝達で,ヌクレオチドの配列パターンが遺伝情報であるとした。いまではその情報伝達(複写・翻訳)の機構も解明され,遺伝子操作は遺伝子情報の加工にほかならない。
しかし一般に用いられている情報の概念は技術的情報だけでなく,意味内容を含めたものとして理解されている。〈情報収集〉とか〈情報の漏洩〉という場合の情報は,符号だけではなくその符号のもつ意味内容をも指している。換言すれば,人間の行動や社会の存続にとって意味のあるものごとについての〈知らせ〉が情報と考えられているのである。人文・社会科学において対象とされる情報の概念も,ほぼこれに近い。これはプラグマティックな意味の面から見た〈価値的情報〉と呼ぶことができる。価値的情報は種々の特質をもっているが,その第1は時間の次元をもつことであって,時間とともに価値が減少し(予報はその時が過ぎれば価値がなくなる),未来の時間が反映する(将来の目標のための現在の決定に必要な情報が価値をきめる)。第2は,多くのコピーを取ることができ,無限の大量生産が可能であり,複製ということの意義が変化する。物の場合には複製は偽物であるが,パンチカード,ビデオテープやフロッピーディスク,コンパクトディスクなどはオリジナルと同じ価値を持つ。しかもコピーして譲渡・伝達しても情報源から情報は失われない。第3に,情報の受取り手も努力を必要とする。必要なメッセージを得るためには,大量の情報の中から必要なものを選び出さなくてはならず,解読のためのコードを知っていなければならない。前者のためには情報検索(データベース),後者の場合には翻訳機が開発されている。
現在,情報伝達の媒体はますます多様化し,速さも量も増大しており,情報処理の速度や記憶容量も増えているが,質の向上と変換の技術が今後の課題で,入出力機構や翻訳の自動化が開発目標となっている。質については〈忠実度fidelity〉の高度化が技術的課題である。他方で,パターンの意識的変換を情報処理で行う芸術活動や,表現形式と意味内容の分離を効果的に生かしたパロディなども流行しており,情報概念の果たしている役割は通信やコンピューターや自動制御に限られない広がりをもつといえよう。
→記号 →情報理論
執筆者:坂本 賢三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
フォーマル(定型的)なものの否定が原語の意味であり、変化を知らせる信号(シグナル)や兆候などとしてとらえられる概念。つまり、データや資料は、それ自体では意味をもたない、方向性のないスカラー量でもある。しかし、これを分析すると、変化や兆候を示す、方向性のあるベクトル量となる。これが情報である。情報の単位としては、アメリカの応用数学者シャノンの通信理論で定義されたビットbitが著名である。もともとは電気通信信号の変化の測度であったが、より広範な適用を可能とするインフォメーション・セオリーが確立され、情報伝達と情報処理のための基礎を築いた。ちなみに、1950年代なかばに確立したインフォメーション・セオリーを情報理論と直訳したのが、現在の情報の語意の初めであり、それ以前は情報といえば諜報(ちょうほう)と同義語であった。情報処理の中枢となるコンピュータの発達と、情報伝達のための電気通信網との結合が、社会的な情報の重要性を増してきている。
[安田寿明]
『高橋秀俊他著『東京大学公開講座13 情報』(1971・東京大学出版会)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)ジェリコ・コンサルティング流通用語辞典について 情報
…現代の科学技術は物質,エネルギー,情報の3本の柱に支えられている。機械は物質でできており,物質である材料を加工する。…
…コンピューターによる迅速な情報処理と,多様な通信メディアによる広範な情報伝達によって,大量の情報が不断に生産,蓄積,伝播されている社会をさす。通信技術とコンピューターの飛躍的な発達を背景として,1960年代後半ころから日常的にも広く用いられるようになった。…
… このような複雑さをキーワードとする研究は,ボトムアップ的に,さまざまな分野からの要請として出てきている。例えば,情報科学においては複雑さは主要研究課題の一つであり,経済分野からも複雑系への関心は大きい。また,サンタフェ研究所は,たんに複雑な振舞いをするだけではなく,環境に適応するシステムである〈複雑適応系〉という概念を提案している。…
※「情報」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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