情報(読み)じょうほう(英語表記)information

翻訳|information

精選版 日本国語大辞典 「情報」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ほう ジャウ‥【情報】

〘名〙
① 事柄の内容、様子。また、その知らせ。
※藤鞆絵(1911)〈森鴎外〉「佐藤君は第三の情報(ジャウハウ)を得た」
※明治大正見聞史(1926)〈生方敏郎〉関東大震災「誰かが砲兵工廠が今焼けて居る。と云ふ情報をもたらした」
② 状況に関する知識に変化をもたらすもの。文字、数字などの記号、音声など、いろいろの媒体によって伝えられる。インフォメーション
③ 高等学校の教科の一つ。コンピュータや情報通信ネットワークなど、情報および情報技術を活用するための知識・技能の習得を通して、情報に関する科学的な見方を養い、情報化社会に対応できる能力と態度を育てることを目標とするもの。平成一五年(二〇〇三)から設けられている。情報科。
[語誌](1)明治期には、様子の報告というほどの意味であった。例えば金沢庄三郎の「辞林」(一九〇七)の語釈は「事情のしらせ」、山田美妙の「大辞典」(一九一二)の語釈は「事情の報告」となっており、「英和口語辞典(第三版)」(一九〇四)でも report の訳語の一つとして挙げられている。
(2)現在のように information と緊密に結びつくようになったのは、一九五〇年代半ばに確立した information theory が「情報理論」と訳され、普及したことによる。

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デジタル大辞泉 「情報」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ほう〔ジヤウ‐〕【情報】

ある物事の内容や事情についての知らせ。インフォメーション。「事件についての情報を得る」「情報を流す」「情報を交換する」「情報がもれる」「極秘情報
文字・数字などの記号やシンボルの媒体によって伝達され、受け手に状況に対する知識や適切な判断を生じさせるもの。「情報時代」
生体系が働くための指令や信号。神経系の神経情報、内分泌系のホルモン情報、遺伝情報など。
中等教育の教科の一。情報技術(IT)や情報化社会のモラルなどを身につけることを目標とする。情報科。
[類語](1)(2報道報知知らせ通信広報一報特報速報急報ジャーナリズムマスコミマスコミュニケーションニュースインフォメーションノウハウデータ
[補説] 
2016年に実施した「あなたの言葉を辞書に載せよう。2016」キャンペーンでの「情報」への投稿から選ばれた優秀作品。

◆振り回されてもしがみついてしまうもの。
エヌジマさん

◆有り過ぎると無いに等しくなるもの。
桐子博士さん

◆人をも操れる形の無いもの。
おこげさん

◆受け手によって意味の変わるモノ。
ぽちさん

◆嘘か真か見極めて利用しなければならないもの。
みいこさん

◆簡単に信じてはいけないモノ。使いようにより武器にも弱点にもなる諸刃の剣。
ボブさん

◆賢く取捨選択しないと踊らされてしまうもの。
ROIさん

ウィキペディア
イケガミユイさん

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改訂新版 世界大百科事典 「情報」の意味・わかりやすい解説

情報 (じょうほう)
information

〈情報〉という語は,広義にはニュースや知識を指すのにも用いられているが,厳密には,人間を離れて客観的に伝達・処理ができるようになった段階でのそれをいう。その伝達や処理は元来は人間が担っていたものであるが,技術発達の過程で,材料加工から〈物質〉の概念が生まれ,原動機の開発から〈エネルギー〉の概念が生まれたように,通信技術やコンピューター自動制御の発達の結果,新しく〈情報〉の概念が形成されたのである。情報を生産したり伝達したりするのは制御のためであり,利用しやすくするために保存(記録・記憶)や加工(情報処理)も行われる。現代的意味での情報の特徴は,その表現形式と意味内容が分離されうることである。20世紀初頭すでにソシュールが言語を記号と見,能記(シニフィアンsignifiant,意味するもの)と所記(シニフィエsignifié,意味されるもの)を区別していたが,数学や工学では意味内容は一般的な扱いができないのでこれを捨象し表現形式のみを扱う。このように意味内容(メッセージ)を切り離して符号(コード)のみを取り上げた場合の情報を〈技術的情報〉という。

 技術的情報は符号の組合せであって一般的にいえば〈パターン〉である。情報伝達(通信)や情報処理で扱われる情報はこのパターンで,量的に規定することができる。1928年にベル電話研究所のハートリーR.V.Hartleyが,n個の区別しうる状態をもつ記憶装置はlognの〈情報容量C〉をもつと定義し,これで測られる量を〈情報information〉と呼んだ。これが技術的情報概念の最初の規定である。しかし同じ容量をもっていても,区別されない符号が並んでいるのと区別されるものが特定の順序で並んでいるのとでは情報の量が異なる。ハートリーは〈心理的要素を考慮に入れてきめなければならない〉として〈情報量〉の規定を避けたが,シャノンC.E.Shannonは48年,確率pの状態にある情報量Cを-log pで定義した。これだと,確率が小さいほど情報量が大きいという心理的事実と合うのである。この定義によれば-符号あたりの平均情報量Hとなり,熱力学でいうエントロピーと同じ形をしているので〈エントロピー〉と呼ばれる。ただし熱力学の場合と異なり負号がついているので〈負エントロピー(ネゲントロピーnegentropy)〉ということもある。統計力学でいうエントロピーが〈無秩序性の測度〉であるのに対し,情報のエントロピーは負なので情報は〈秩序性の測度〉といってもよい。このように量的に定義されることによって,情報のノイズやフィルタリングの問題が解けるようになり,代数学を用いた符号化の理論もできた。技術的情報は符号の系列であるから,情報をベクトルと考えヒルベルト空間の点とみなして幾何学的に扱う信号空間の理論もある。さらに,53年にDNAの二重らせん構造を提案したJ.D.ワトソンとF.H.C.クリックは,ガモフの示唆により遺伝が情報の伝達で,ヌクレオチドの配列パターンが遺伝情報であるとした。いまではその情報伝達(複写・翻訳)の機構も解明され,遺伝子操作は遺伝子情報の加工にほかならない。

 しかし一般に用いられている情報の概念は技術的情報だけでなく,意味内容を含めたものとして理解されている。〈情報収集〉とか〈情報の漏洩〉という場合の情報は,符号だけではなくその符号のもつ意味内容をも指している。換言すれば,人間の行動や社会の存続にとって意味のあるものごとについての〈知らせ〉が情報と考えられているのである。人文・社会科学において対象とされる情報の概念も,ほぼこれに近い。これはプラグマティックな意味の面から見た〈価値的情報〉と呼ぶことができる。価値的情報は種々の特質をもっているが,その第1は時間の次元をもつことであって,時間とともに価値が減少し(予報はその時が過ぎれば価値がなくなる),未来の時間が反映する(将来の目標のための現在の決定に必要な情報が価値をきめる)。第2は,多くのコピーを取ることができ,無限の大量生産が可能であり,複製ということの意義が変化する。物の場合には複製は偽物であるが,パンチカードビデオテープフロッピーディスク,コンパクトディスクなどはオリジナルと同じ価値を持つ。しかもコピーして譲渡・伝達しても情報源から情報は失われない。第3に,情報の受取り手も努力を必要とする。必要なメッセージを得るためには,大量の情報の中から必要なものを選び出さなくてはならず,解読のためのコードを知っていなければならない。前者のためには情報検索(データベース),後者の場合には翻訳機が開発されている。

 現在,情報伝達の媒体はますます多様化し,速さも量も増大しており,情報処理の速度や記憶容量も増えているが,質の向上と変換の技術が今後の課題で,入出力機構や翻訳の自動化が開発目標となっている。質については〈忠実度fidelity〉の高度化が技術的課題である。他方で,パターンの意識的変換を情報処理で行う芸術活動や,表現形式と意味内容の分離を効果的に生かしたパロディなども流行しており,情報概念の果たしている役割は通信やコンピューターや自動制御に限られない広がりをもつといえよう。
記号 →情報理論
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図書館情報学用語辞典 第5版 「情報」の解説

情報

送り手と受け手の存在を想定したときに,送り手からチャネルやメディアを通じて受け手に伝えられるパターン.図書館情報学では,ブルックス(Bertram Claude Brookes 1910-1991)による「受け手の知識の構造に変化を与えるもの」という定義が広く知られている.一方,受け手の内部に形成される新しい構造を情報と考えたり,作用の過程そのものを情報と呼ぶ立場もある.情報は,データと知識との区別,また,物質やエネルギーとの対比によっても説明される.情報という語は,明治の初期に酒井忠恕(1850-1897)によって造語されたが,日常的に使用されるようになったのは最近のことである.その日常的な用法では,知識が蓄積であるのに対し,情報は流れとみなされる傾向がある.情報の意味は多様で,分野に依存しているので定義ができないという意見もあるが,情報の定義や意味の探求は図書館情報学の基本的な研究課題の一つとなっている.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「情報」の意味・わかりやすい解説

情報
じょうほう
information

フォーマル(定型的)なものの否定が原語の意味であり、変化を知らせる信号(シグナル)や兆候などとしてとらえられる概念。つまり、データや資料は、それ自体では意味をもたない、方向性のないスカラー量でもある。しかし、これを分析すると、変化や兆候を示す、方向性のあるベクトル量となる。これが情報である。情報の単位としては、アメリカの応用数学者シャノンの通信理論で定義されたビットbitが著名である。もともとは電気通信信号の変化の測度であったが、より広範な適用を可能とするインフォメーション・セオリーが確立され、情報伝達と情報処理のための基礎を築いた。ちなみに、1950年代なかばに確立したインフォメーション・セオリーを情報理論と直訳したのが、現在の情報の語意の初めであり、それ以前は情報といえば諜報(ちょうほう)と同義語であった。情報処理の中枢となるコンピュータの発達と、情報伝達のための電気通信網との結合が、社会的な情報の重要性を増してきている。

[安田寿明]

『高橋秀俊他著『東京大学公開講座13 情報』(1971・東京大学出版会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「情報」の意味・わかりやすい解説

情報
じょうほう
intelligence

国家,団体,または個人が,敵対,対立,競合関係にある国家,団体,個人についての状況を知るために獲得する知識をいう。対象が友好国 (団体,個人) もしくは,自己または第三者に関する相手側の情報ないしは判断もまた情報として処理される。これらに関する資料が情報資料 informationであって,一般には混同されて使用されている。情報には,その活動に必要な分野に従って,国家情報 (主として政治) ,軍事,経済,科学技術,および産業などがあり,それらの情報資料獲得の手段によって,合法,非合法の別がある。後者を一般にスパイ (活動) と称する。前者については,公刊物,公開地域,物件の視察,談話および公海,公空,自国あるいは友好国の領土,領海 (空) 内から行われる通信傍受,偵察行動を含むものであり,戦時にあっては兵力による偵察は合法である。戦時スパイは違法ではないが厳罰に処せられる。平時におけるスパイ行動は,その国の法律によって処理,処罰される。これらによって獲得,集約された情報資料は,情報機関によって処理 processing (整理,分析,評価,判断など) が行われ,それぞれの目的に従って利用される。最近の傾向として,これらの全部または一部にコンピュータが使用されている。また国際情勢の複雑化,科学技術の進歩と産業界における国際的・国内的競争の激化および安全保障との密接な関係から,各分野全般に情報活動が変化し,かつ活発化している。これらに関する防護もまた情報活動の一部であって,保全 securityの重要な部門をなしている。

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流通用語辞典 「情報」の解説

情報

インフォメーションを情報といっているケースが多いが、インフォメーションは広義の概念で「お知らせ」の意味で使用されることが多い。サイバネティクスの創始者であるN.ウィナーは情報をつぎのように定義している。情報とは、われわれが下界に対して自己を調節し、かつその調節行動によって下界に影響を及ぼしていく際に、下界との間で交換されるものの内容を指す言葉である。情報を受け取ることによって、われわれは環境の予知しえぬ変転に対して自己を調節し、効果的に生きていくことができる。すなわち、環境に適応するために情報が必要である。小売業にとって、POS(販売時点)情報は顧客ニーズの把握や人気・不人気商品を発見するのに貴重な情報源である。

出典 (株)ジェリコ・コンサルティング流通用語辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の情報の言及

【情報科学】より

…現代の科学技術は物質,エネルギー,情報の3本の柱に支えられている。機械は物質でできており,物質である材料を加工する。…

【情報化社会】より

…コンピューターによる迅速な情報処理と,多様な通信メディアによる広範な情報伝達によって,大量の情報が不断に生産,蓄積,伝播されている社会をさす。通信技術とコンピューターの飛躍的な発達を背景として,1960年代後半ころから日常的にも広く用いられるようになった。…

【複雑系】より

… このような複雑さをキーワードとする研究は,ボトムアップ的に,さまざまな分野からの要請として出てきている。例えば,情報科学においては複雑さは主要研究課題の一つであり,経済分野からも複雑系への関心は大きい。また,サンタフェ研究所は,たんに複雑な振舞いをするだけではなく,環境に適応するシステムである〈複雑適応系〉という概念を提案している。…

※「情報」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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