憚る(読み)ハバカル

デジタル大辞泉 「憚る」の意味・読み・例文・類語

はばか・る【×憚る】

[動ラ五(四)]
差し障りをおぼえてためらう。気がねする。遠慮する。「世間体を―・る」「他聞を―・る」「だれにも―・らず自由に生きる」
幅をきかす。増長する。いばる。「憎まれっ子世に―・る」
いっぱいに広がる。はびこる。
一間ひとまに―・るほどの物のおもて出で来てのぞき奉る」〈平家・五〉
[類語](1遠慮恐れる控える気兼ね心置きはばか控え目斟酌しんしゃく忌憚きたん謹慎内輪差し控える慎む断る自粛自重自戒自制自律禁欲

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「憚る」の意味・読み・例文・類語

はばか・る【憚】

  1. ( 「はばむ(阻)」と同源。のちに「はびこる」と混同され、また、「はば(幅)」を活用させた語という意識も生じた )
  2. [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 対象を敬遠する気持があって距離を置く。差し障りがあってうまくいかなくなる。行き悩む。遠慮する。
      1. [初出の実例]「赤駒の い行き波々箇屡(ハバカル) 真葛原 何の伝言 直にし良(え)けむ」(出典:日本書紀(720)天智一〇年一二月・歌謡)
      2. 「荒し男も 立しや波婆可流(ハバカル) 不破の関 越(く)えて我(わ)は行く」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三七二)
    2. いっぱいになる。満ちふさがる。はびこる。
      1. [初出の実例]「彌陀の身も天のみ空にはばかりてよもせばしとや思ひ知るらん」(出典:散木奇歌集(1128頃)釈教)
    3. いばる。幅をきかせる。「憎まれっ子世にはばかる」
      1. [初出の実例]「天下にはばかるほどの欲をするものを戒るぞ」(出典:古文真宝笑雲抄(1525)一)
  3. [ 2 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. ( 対象との間に差し障りのあることから ) 恐れつつしむ。気がねする。遠慮する。
      1. [初出の実例]「然るに皇后の言に重(ハハカリ)、亦友于之義(このかみおとふとのことわり)に敦(あつ)くまして忍びて罪(つみせ)ず」(出典:日本書紀(720)仁徳四〇年二月(前田本訓))
      2. 「睦び聞えさせんも、はばかる事多くて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蓬生)
      3. 「黄村は〈略〉あたりをはばかるやうな低い声で問うた」(出典:ロマネスク(1934)〈太宰治〉嘘の三郎)
      4. [その他の文献]〔論語‐学而〕
    2. 忌みきらう。
      1. [初出の実例]「身命を惜しまず、疲労を憚(ハハカラ)ずある応し」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)五)
    3. とむらう。葬式を出す。〔文明本節用集(室町中)〕

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