デジタル大辞泉
「戯」の意味・読み・例文・類語
あじゃら【▽戯】
おどけ。たわむれ。冗談。かりそめ。
「―が誠になるわいな」〈伎・幼稚子敵討〉
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そば・える そばへる【戯】
[1] 〘自ハ下一〙 そば・ふ 〘自ハ下二〙
① 馴れてたわむれる。ふざける。あまえる。
(イ) 馴れ親しんであまえる。
※枕(10C終)三九「そばへたる小舎人童(こどねりわらは)などに、ひきはられて泣くもをかし」
(ロ) 度を越して馴れ馴れしくする。人を軽んじてふざける。
※宗祇短歌(江戸初)「あしき女ばうの事〈略〉人そはへたるものわらひ」
(ハ) (犬・猫・虎などの動物が)じゃれる。
※
浮世草子・
御前義経記(1700)七「目貫
(めぬき)はくりから不動に猫のそばへる所を物ずき」
※
山家集(12C後)上「初花のひらけはじむる梢よりそばへて風の渡るなりけり」
③ 日が照っているのに、小雨が降りすぎる。〔
俚言集覧(1797頃)〕
[2] 〘他ハ下一〙 そば・ふ 〘他ハ下二〙
① あまえさせる。安楽にする。
※中華若木詩抄(1520頃)中「身外のことを案じつづくれば、身をそばへふるべきやうもないぞ」
② (「…をそばえる」の形で用い) …とふざけ、たわむれる。
いたずらをする。
※浮世草子・
好色万金丹(1694)五「三斑
(みけ)の小猫の珠数をそばへて駆け出たるを」
[補注](1)歴史的
かなづかいについて、「
疑問仮名遣」では「
万葉集」の「いそばふ」(ただし
四段活用)と関連のあるもの、さらに中古の「おそばふ」の略であるとして「そばふ」と認めている。
(2)室町時代頃からヤ行にも活用した。→
そばゆ(戯)
たわぶれ たはぶれ【戯】
〘名〙 (動詞「たわぶれる(戯)」の連用形の名詞化。「たわむれ」の古形)
① 遊び興じること。また、その遊び。
※
紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一一日「右宰相中将は、権中納言とたはぶれして、対の簀子にゐ給へり」
※
梁塵秘抄(1179頃)二「遊びをせんとや生まれけむ、たはぶれせんとや生まれけん」
② 本気でなく、事をすること。遊びや
なぐさみですること。かりそめなこと。また、ふざけること。いたずら。わるさ。
※忠見集(960頃)「たはぶれの身にしあらねば稲荷山祈る日よりぞさかはゆきける」
※枕(10C終)三一九「ただ心ひとつに、おのづから思ふ事を、たはぶれに書きつけたれば」
③ 本気でなく、遊びやからかいとして言うこと。ふざけて言うこと。冗談。
※
多武峰少将物語(10C中)「山へまかるぞときこえ給ければ例のこととたはぶれにおほしてなむきこえ給ける」
④ 男女の性的交渉を冗談めかしていう語。また、男女がいちゃつくこと。また、本気でない男女の交わり。浮気。
※浮世草子・
好色一代女(1686)一「世には悩
(なづみ)の深き調謔
(タハフレ)もあるに、なんぞ朽木に音信
(をとづれ)の風」
ざ・れる【戯】
〘自ラ下一〙 ざ・る 〘自ラ下二〙 (文語「ざる」は古くは「さる」か)
① ふざける。たわむれる。はしゃぐ。
※宇津保(970‐999頃)楼上上「いと小さき小舎人童、『御返りたまはらむ』と言ふ。〈略〉『いとされてくちをしきわらはかな』といふ」
② 気がきいている。物わかりがよく気転がきく。
※落窪(10C後)一「おやのおはしける時より使ひつけたるわらはの、されたる女ぞ、後見とつけて使ひ給ひける」
③ あだめいている。色めいている。くだけた感じがする。
※紫式部日記(1010頃か)寛弘五年一一月一日「はかなきこともいふに、いみじくされいまめく人よりも、げにこそおはすべかめり」
④ すぐれた趣がある。風雅な味わいがある。
※源氏(1001‐14頃)浮舟「大きやかなる岩のさまして、されたる常磐木の影、しげれり」
[補注](1)語頭の清濁に関して「さる」「ざる」両形が考えられ、語源、および後世の「しゃれ(洒落)る」「じゃれる」との関連についても諸説ある。
(2)語形上では、「さるる」からの「しゃるる(しゃれる)」、「ざるる」からの「じゃるる(じゃれる)」の派生は自然であり、また、現代語で「しゃれる」=垢抜ける、「じゃれる」=ふざけるの分化は明瞭であるが、この対立が歴史的にどこまでさかのぼりうるのかが問題となる。
たわむれ たはむれ【戯】
〘名〙 (動詞「たわむれる(戯)」の連用形の名詞化。古くは「たわぶれ」)
① 遊び興じること。また、その遊び。
※人情本・春色恵の花(1836)二「足へ何といふ字をかいてやるヨなどといふこと流行(はやる)とぞ。かかるたはむれが、あどけなくておもしろかるべし」
② 本気でなくある動作を、すること。ふざけること。いたずら。また、かりそめなこと。
※春曙抄本枕(10C終)四三「嫌疑の者やあると、たはむれにも咎む」
※一握の砂(1910)〈
石川啄木〉我を愛する歌「たはむれに母を背負ひて そのあまり軽きに泣きて 三歩あゆまず」
③ 本気ではなく、遊びやからかいとしていうこと。冗談。
※教訓和歌西明寺百首(室町末)「わらはるる時にもむげにはらだちてたはむれしらぬ人ぞうたてき」
④ 男女の性的交渉を冗談めかしていう語。また、男女がいちゃつくこと。また、本気でない男女の交わり。浮気。
※浮世草子・男色大鑑(1687)四「昼寝の房枕夜すがらの調謔(タハムレ)此上臈十六の春の色」
[補注]「春曙抄本枕草子」の例は、諸写本には「たはふれ」とある。
たわぶ・れる たはぶれる【戯】
〘自ラ下一〙 たはぶ・る 〘自ラ下二〙 (「たわむれる」の古形)
① そのものに対して、興のおもむくままにふるまう。遊び興ずる。無心に遊ぶ。
※万葉(8C後)五・九〇四「しきたへの 床のへ去らず 立てれども 居れども ともに戯礼(たはぶレ)」
※高野本平家(13C前)三「夏の事なれば、何となう河の水に戯(タハフレ)給ふほどに」
② 本気でないことや、ふざけたことを言う。冗談を言う。また、とりとめもないことを言う。〔
新撰字鏡(898‐901頃)〕
※源氏(1001‐14頃)玉鬘「我に並び給へるこそ君はおほけなけれとなむたはぶれ聞え給ふ」
③ 本気でなく、事をする。遊び半分のふるまいをする。また、相手を軽くみて、ふざけかかる。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)八「慢(みたり)がはしく八正を乖きて、戯(タハフ)れて百非に入る」
④ 異性に対してふざけかかる。みだらな言動をする。不倫なことをしかける。
※蜻蛉(974頃)中「あさましと思ふに、うらもなくたはぶるれば」
たわむ・れる たはむれる【戯】
〘自ラ下一〙 たはむ・る 〘自ラ下二〙 (古くは「たはぶる」→
たわぶれる)
① そのものに対して興のおもむくままに働きかけてふるまう。遊び興じる。無心に遊ぶ。
※太平記(14C後)一二「宮は〈略〉火威の鎧の裾金物に、牡丹の陰に獅子の戯(タハムレ)て前後左右に追合たるを、草摺長に被レ召」
※一握の砂(1910)〈石川啄木〉我を愛する歌「東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」
② ふざけて言う。冗談を言う。
※太平記(14C後)五「大般若の櫃の中を能々捜したれば、大塔宮はいらせ給はで、大唐の玄弉三蔵こそ坐けれと戯(タハム)れければ」
③ 相手を軽くみてふざけかかる。面白半分の気持でことをする。ふまじめにふるまう。
④ 異性にざれかかる。みだらな言動をする。また、男女がいちゃつく。痴戯をする。
※歌舞伎・三十石艠始(1759)四幕「『ソレソレ、爾(さ)う手を上げた所を、恁(か)う緊め付けたものぢゃ』ト戯(タハブ)る」
あざ・る【戯】
[1] 〘自ラ下二〙
① ふざける。たわむれる。ざれる。
※土左(935頃)承平四年一二月二二日「かみなかしも、酔ひあきて、いとあやしく、潮海(しほうみ)のほとりにて、あざれあへり」
② うちとける。くつろぐ。儀式ばらないでくだける。
※源氏(1001‐14頃)紅葉賀「しどけなくうちふくだみ給へる鬢茎(びむくき)、あざれたる袿(うちき)姿にて」
③ しゃれる。風流である。気転がきく。
※枕(10C終)八七「返しはつかうまつりけがさじ、あざれたり」
[2] 〘自ラ四〙 ふざける。たわむれる。
※評判記・
難波物語(1655)「たとへば、我身にちがひなどあるとき、そのおりのしゅびを、すこしもかくさず、いちいちあざりていふ類也」
たわけ たはけ【戯】
〘名〙 (動詞「たわける(戯)」の連用形の名詞化)
① 正常でない、また常識にはずれた行為をすること。特に、みだらな行為、許されない性的ふるまいをすること。「牛たわけ」「親子たわけ」など。〔文明本節用集(室町中)〕
② ふざけること。ばかなことをすること。浮かれさわぐこと。
※
信長公記(1598)首「去ては此比たわけを態御作り候よと、肝を消し」
※
黄表紙・見徳一炊夢(1781)中「
素人狂言もあまりたはけと心づきて」
③ ばか。おろかもの。たわけもの。あほう。多く、人をののしっていう語。
※虎明本狂言・
岡太夫(室町末‐近世初)「人をたはけにして、ふだんくふめしをしらぬといふ事があらふか」
たわ・ける たはける【戯】
〘自カ下一〙 たは・く 〘自カ下二〙
① 正常でない、また常識にはずれたことをする。特にみだらなことをする。ふしだらな行ないをする。たわしる。
※書紀(720)応神二五年(熱田本訓)「王母(こきしのいろね)と相婬(タハケ)て、多に行無礼(ゐやなきわさ)す」
② たわむれる。ふざける。ばかなことをする。〔
日葡辞書(1603‐04)〕
※
浄瑠璃・
傾城反魂香(1708頃)中「五日前より奥に夫婦並んでじや、たはけたことぬかすまい」
そば・ゆ【戯】
(ハ行下二段活用の「そばふ」から転じて、室町時代ごろから用いられた語。多くの場合、
終止形は「そばゆる」の形をとる)
[1] 〘自ヤ下二〙 =
そばえる(戯)(一)〔塵芥(1510‐50頃)〕
※
多聞院日記‐元亀三年(1572)閏正月二八日「今暁夢に、狐一ふところに入て、種々そはゆる間」
[補注]ハ行かヤ行か明らかでない例も多いが、本項には明らかな例だけをあげた。
そばえ そばへ【戯】
〘名〙 (動詞「そばえる(戯)」の連用形の名詞化)
① あまえ、ふざけること。たわむれること。
② 狂いさわぐこと。特に、気象上の激しい動きにいう。
※出観集(1170‐75頃)冬「ささぶきのまやの軒にはたるひして雲のそばえに霰ふる也」
③ ある所だけに降っている雨。通り雨。わたくし雨。日照雨。むらしぐれ。
※万代(1248‐49)冬「嵐吹く時雨の雨のそばへにはせきの雄波の立つ空もなし〈藤原頼宗〉」
たわけ・し たはけし【戯】
〘形ク〙
① ふざけている。ばかげている。おろかである。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉二「地理も事情もしらぬひの。つくしに尽す戯作活業(タハケキわざ)も」
② みだらである。不品行である。好色である。
※読本・椿説弓張月(1807‐11)前「わらはを見てなめげにも、淫(タハケ)き心を発(おこ)したれば」
たわ‐し たは‥【戯】
〘形シク〙 みだらである。好色である。
※書紀(720)武烈八年三月(図書寮本訓)「大に侏儒(ひきひと)・倡(わさ)優を進めて爛漫(みたりかは)しき楽を為、奇偉(あやしくうたてあ)る戯を設けて靡靡(タハシキ)声を縦(ほしままに)す」
※箚録(1706)「『伊勢物語』『源氏物語』皆其習しを承て、たわしき教の第一なれど」
おどけ【戯】
〘名〙 (動詞「おどける(戯)」の連用形の名詞化) たわむれること。ふざけること。滑稽(こっけい)。諧謔(かいぎゃく)。
※評判記・けしずみ(1677)「ぐはんさいがおどけ、さいつごろよりやくしゃをいるるとかやなれば、にぎやかさもさこそあらめ」
※初恋(1900)〈国木田独歩〉「下男の太助は能く滑稽(オドケ)を言ふ面白い男」
そぼ・る【戯】
〘自ラ下二〙
① たわむれる。ふざける。じゃれる。はしゃぐ。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「つばいもちゐ・梨・柑子やうの物ども〈略〉若き人々、そほれ取りくふ」
② しゃれる。きどる。様子がくだけている。
※源氏(1001‐14頃)胡蝶「書きざま、今めかしうそほれたり」
おど・ける【戯】
〘自カ下一〙 ばかげたことをする。ふざけた、こっけいなことを言ったりしたりする。また、そのような様子である。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)二「曹操が利根な者ぢゃほどに懿が大な志があるをとけた志ぞ。王とならはうと云志を知たぞ」
※結城氏新法度(1556)六四条「朝夕めしつかはるるもの共、あるいは他所の足軽其外、をとけたるまね、をとけたるいしゃう、更々もったいなく候」
じゃ・れる【戯】
〘自ラ下一〙 じゃ・る 〘自ラ下二〙 (「ざれる(戯)」の変化した語) ふざけたわむれる。子ども、動物などがなれてまつわりついてたわむれる。
※京大本湯山聯句鈔(1504)「西隣の女がかほよひほどに、謝崑がいとうてじやれたれば」
※幼学読本(1887)〈西邨貞〉一「このみけはちかごろ、なんにもげいをしませんよ。〈略〉あのこまはなんにでもじゃれますよ」
ざら・す【戯】
[1] 〘自サ四〙 たわむれる。じゃれる。
※浮世草子・好色染下地(1691)四「羽箒を猫のくはへて〈略〉ざらすを見れば」
[2] 〘他サ四〙 たわむれさせる。じゃれさせる。じゃらす。
※浮世草子・傾城新色三味線(1718)六「かまぼこを猫にあたへてざらし」
ざれ【戯】
〘名〙 (動詞「ざれる(戯)」の連用形の名詞化) ざれること。ふざけたわむれること。じゃれ。
※御伽草子・鴉鷺合戦物語(室町時代物語大成所収)(室町中)上「爰に口太烏の徒(いたづら)者、多言にして、左札(サレ)緩怠を事とせり」
じゃれ【戯】
〘名〙 (「ざれ(戯)」の変化した語) じゃれること。ふざけること。たわむれ。冗談。ざれごと。じゃれい。〔文明本節用集(室町中)〕
※浄瑠璃・堀川波鼓(1706頃か)上「おどされて床右衛門いまのは何も皆じゃれじゃ。うそじゃうそじゃといひすてて」
あじゃらし・い【戯】
〘形口〙 ふざけた態度である。おどけている。また、いやらしい。みだりがましい。
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)二「わし共は二十年もこっちイ、そんなあじゃらしいこたア中絶のウしていますに」
あじゃら【戯】
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)二「そんな事人の耳へ這入ると、あじゃらが誠に成わいな」
たわ・ぶ たはぶ【戯】
〘自動〙 (活用未詳) たわむれる。ふざける。たわく。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※蒙求和歌(1204)一「仁承君と云ふ賢人有り。身をたはふ心ありて王莽にしたがはずしてこもりぬ」
あじゃ・る【戯】
〘他ラ四〙 (「あざる(戯)」の変化した語か) 他をばかにする。また、ふざけたり冗談を言ったりする。
※玉塵抄(1563)三七「彼が此をあじゃってかう作たことなり」
じゃら・ける【戯】
〘自カ下一〙 ふざける。たわむれる。じゃれる。
※俳諧・海陸前集(1707)春「跡へほど細な銀がのこるなり〈文十〉 じゃらけた恋を諷れて止む〈瓢馬〉」
たわし・る たはしる【戯】
※新撰字鏡(898‐901頃)「作劇 洞劇也 不定之㒵 太波志礼天」
あじゃら・ける【戯】
〘自カ下一〙 あじゃら・く 〘自カ下二〙 ふざける。たわむれる。
※評判記・役者大鑑合彩(1692)嵐三右門「扨太刀打などあじゃらけて見にくし」
じゃら・す【戯】
〘他サ五(四)〙 じゃれるようにする。からかう。じゃれさせる。じゃらかす。
※雑俳・柳多留‐二(1767)「木曾どのは客をじゃらして飯を喰ひ」
そばや・す【戯】
〘他サ四〙 あまえふざけさせる。じゃれさせる。
※浄瑠璃・椀久末松山(1710頃)中「格子出て犬そはやしてゐるを見るやうな」
ぎ【戯】
〘名〙 楽しみの行為をすること。あそび。しばいをすること。
※十善法語(1775)五「戯と傲とによりて、礼式をこゆる類」
あじゃれ【戯】
〘名〙 ふざけること。冗談。あじゃら。
※歌舞伎・霊験曾我籬(1809)九幕「あじゃれも事によるわいなア」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報