ボーナスを含む現役世代の男性の平均手取り収入に対し、公的年金の受給額の割合を表す数値。平均賃金で40年間厚生年金に加入した夫と、その間に専業主婦だった妻をモデル世帯とし、65歳の受給開始時点の夫婦合計の水準を示す。政府は2004年の年金改革で、将来にわたり代替率50%を維持するとした。少子高齢化でも年金制度を持続させるため、現役世代の減少と平均余命の延びを踏まえ給付を抑える「マクロ経済スライド」を導入。給付水準を徐々に低下させ、年金財政のバランスを図っている。
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現役世代の平均賃金に対し、公的年金の受取額がどの程度の水準にあるかを示す指標。年金所得代替率ともいう。賃金に税と社会保険料を含める総所得代替率gross pension replacement ratesと、含めない純所得代替率net pension replacement ratesがある。年金に職域年金や私的年金を含めるかどうか、職業、就労期間、退職年齢、婚姻状態などの前提をどう置くかで、数値が大きく変動する特性がある。このため日本政府は「夫が平均的収入を得たサラリーマンとして40年間厚生年金の保険料を納め、妻が40年間専業主婦だった」というモデル世帯を想定。この夫婦2人世帯の年金額(税・社会保険料込み)が、その時点の現役男性の平均手取り収入(ボーナス込み、税・社会保険料除く)に対し何%になるかを計算している。この計算方式で、日本の所得代替率(2014年6月時点)は62.7%で、年金受給世代は教育費などがかかる現役世代と比べ6割強の収入で暮らすことが標準であることを意味している。ただこの日本の計算方式に対し、野党などから、年金額に税・社会保険料を含め、収入から税・社会保険料を除くのでは、所得代替率が高めの数字となり生活実態を反映していないとの批判がでている。
政府は2004年(平成16)の年金改革で、少子高齢化の進行にあわせて年金の伸びを抑制するマクロ経済スライドを導入したため、日本の所得代替率は今後、徐々に低下していく見通しである。また、働いている現役世代の収入の半分以上の年金額があれば一定程度の生活水準を維持できるとして、将来にわたって最低50%の所得代替率を確保するとの公約を掲げている。また少なくとも5年ごとに年金財政を検証し、所得代替率が50%を下回るとの検証結果が出た場合には、給付と負担の仕組みを見直すことになっている。しかし、日本人の長寿化や経済の低成長化を考慮すると、将来も所得代替率50%超を維持していくためには、年金支給開始年齢の引上げ、年金給付水準の引下げ、高齢者を雇用する場の確保、女性の就労促進などが必要であるとの意見が、経済学者や経済界などから出ている。
なお経済協力開発機構(OECD)は、配偶者を加えない平均的労働者(男性)本人のみをモデルに、45年間加入した場合の所得代替率(年金・収入とも税・社会保険料込み)を公表している。この計算方式では、2013年時点で、日本が35.6%であるのに対し、アメリカ38.3%、イギリス32.6%、フランス58.8%、ドイツ42.0%、スウェーデン55.6%となっている。
[矢野 武 2017年5月19日]
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