改訂新版 世界大百科事典 「擦文土器」の意味・わかりやすい解説
擦文土器 (さつもんどき)
北海道で使用された最後の土器。製法,器形に東北地方の土師器(はじき)の影響が強くみられる。器面内外に木製の篦(へら)状工具による擦痕,あるいは刷毛目痕がつけられているところから,この名称がある。製作時の器面調整痕である。平口縁,平底で,横走沈線,山形,格子目などの直線的沈線を組み合わせた幾何学的文様を特色としている。その文様帯の上下や口縁にくさび状の刻点列がつけられることも多い。器形は深鉢の甕を主体に,浅鉢の杯や高杯もみられ,また末期には例は少ないが,内耳鉄鍋を模したとみられる内耳土鍋(炎が弦に当たらないように内面に吊り耳をつけた鍋)があらわれる。使用年代幅については,8世紀の初・中・後期または9世紀初頭から13世紀初頭前後まで,あるいは道東では17世紀初頭までなどの諸説あり,編年についても数種の試案があって定説をみていない。最近は,道東部でトビニタイ式といわれる,オホーツク式土器との融合形が発見され注目されている。
執筆者:藤本 英夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報