斯く(読み)カク

デジタル大辞泉 「斯く」の意味・読み・例文・類語

かく【×斯く】

[副]
話し手が身近なこととして事態をとらえていう。このように。こう。「この家のあるじは―いう私だ」
前文内容をさして、あるいは具体的な内容を省略していう。このように。こう。「―も盛大な会を催していただき」
事態が限界に達しているさま。ここまで。これほどまで。「―なる上はやむをえない」
[補説]古くは「か」と対の形でも用いられた。→とかくとにかくともかくとやかく
「か行けば人にいとはえかく行けば人に憎まえ」〈・八〇四〉
「そゑにとてとすればかかりかくすればあな言ひ知らずあふさきるさに」〈古今雑体
[類語]斯く斯くこうこうこれこれかようこんなこういうこのようかかるこうしかじかなになにかなにかしらなになに

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「斯く」の意味・読み・例文・類語

か‐く【斯・此】

  1. 〘 副詞 〙
  2. あり得る事態を観念的、限定的にとらえて、それを指示する。「か…かく…」または「と…かく…」と対にしても用いる。こう。こうこう。
    1. [初出の実例]「かもがと 我が見し子ら 迦久(カク)もがと 我が見し子に うたたけだに 向かひ居るかも い副ひ居るかも」(出典古事記(712)中・歌謡)
    2. 「れいのことわり、『これ、としてかくして』などあるもいとにくくて」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
  3. 事態を、話し手が自分の立場から現実的、限定的にとらえて、それを指示する。このように。
    1. [初出の実例]「くやしかも可久(カク)知らませば青丹よし国内(くゐち)ことごと見せましものを」(出典:万葉集(8C後)五・七九七)
    2. 「此く参ぬ。只仰せに随ひて罷り可返き也」(出典:今昔物語集(1120頃か)一九)
  4. 事態を是認し、または納得する気持をこめて指示する。そう。こう。
    1. [初出の実例]「おとづれ給はで日ごろへぬ。まちきこえ給ところは、たえま遠き心ちして、猶かくなめりと心細くながめ給ふに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
  5. 事態の成り行きが限界に達したことを認める気持を表わす語。もうこれでおしまいだ。これまで。
    1. [初出の実例]「人々いまはかくとて海にしづみし有様」(出典:平家物語(13C前)灌頂)

斯くの補助注記

「かく」の「く」は形容詞連用形語尾の「く」と同じであろう。この接尾要素によって、「かく」は「か」よりも副詞として安定した性格を持つもののようである。

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