地球に達する太陽放射(太陽から放射される電磁波)のうち,近紫外から近赤外の電磁波のこと。波長で表すと約0.3μmから約4μmの範囲に入る放射で,直射光,散乱光と反射光とがある。太陽光線に直角な面に入ってくる直射光と散乱光を直達日射,水平面に入ってくる全天からの直射光,散乱光および反射光を天空散乱日射という。また水平面が受ける直達日射と天空散乱日射を合わせて全天日射という。
日射量とは単位面積当り,単位時間に受ける日射エネルギー量のことで,直達日射量,全天日射量などがある。直達日射量は全国地点の永年気候観測所で測られ,kW/m2の単位で表される。全国日射量は全国65地点の普通気候観測所と永年気候観測所で測られ,MJ/m2の単位で表される。
大気圏の外での直達日射量を大気外日射量という。地球と太陽の距離が平均距離のときの大気外日射量は1.98cal/cm2・minで,これを太陽定数という。大気外日射量が地表に届くまでに,オゾン,二酸化炭素,水蒸気などの気体によって吸収されたり,空気分子や細塵などによって散乱されるので,日射量は減衰する。地表に達する日射量は最大でも1.4~1.5cal/cm2・min程度である。実際の大気中には大粒の水滴や浮遊塵があるので,さらに吸収・散乱され,厚い雲があると70~80%の日射は反射される。したがって地表に到達する日射は大気外日射量の約50%で,約30%は宇宙空間に失われ,約20%は大気中に吸収される。
→大気放射 →太陽熱
直達日射計,全天日射計,天空散乱日射計がある。直達日射計は太陽から大気を通過して直接地上に達する日射のエネルギーを測る器械で,銀盤日射計が一般に用いられる。全天日射を測るには,放射エネルギーを熱電堆によって電気的な出力に変換するエプリー全天日射計が用いられる。天空散乱日射量を測定する場合は,全天日射計に直達日射だけを遮蔽する装置を取り付けて測定する。日射の定常観測は気象観測の一環として各地の気象台やおもな測候所で行われる。
執筆者:朝倉 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
太陽から放射されて地球に注がれる熱エネルギー。日射は地球大気を通ってくる間に空気分子や塵埃(じんあい)により散乱され、一方、オゾン、二酸化炭素(炭酸ガス)、水蒸気によって吸収される。残りの日射は地表に達し、地表や海面を暖める。したがって日射のエネルギーは大気や海洋におこるいろいろな自然現象の根源になるばかりでなく、農作物の生育や保健衛生などと深いつながりをもっている。
日射量は瞬間値については1平方メートル当りのキロワットで、また、積算値(たとえば1時間値、1日値など)については1平方メートル当りのメガジュールで表す。なお、従来用いられてきた1カロリー・毎平方センチメートル・毎分は0.698キロワット・毎平方メートル(瞬間値)、1カロリー・毎平方センチメートルは0.0419メガジュール・毎平方メートル(積算値)である。大気の散乱や吸収を受けない大気外の日射量を、太陽に向けた平面の受けるエネルギーで表すと、およそ1.4キロワット・毎平方メートル(約2カロリー・毎平方センチメートル・毎分)となる。これを太陽定数という。太陽定数は、空気中に細塵や水蒸気の少ない山の上などで測定した結果から求める。現在は人工衛星などによっていっそう正確な値が求められるようになった。
太陽を含めて全天から地上の水平面にやってくる日射量を水平面全天日射量、または単に全天日射量という。普通、日射量といえばこの全天日射量をさすことが多い。全天からではなくて、単に太陽からのみの放射が太陽光線に直角に入射する日射量を直達日射量という。大気外の直達日射量と地上での直達日射量とを比較することによって、大気の混濁の程度を知ることができるので、火山噴火、大気汚染などの調査に利用され、また気候の長期変動の調査にも利用される。
[大田正次・股野宏志]
統計開始から2000年(平成12)までの、日本各地で測定された平均値(単位メガジュール・毎平方メートル)によれば、北海道の札幌での最大値は6月の18.4、最小値は12月の4.8、東京での最大値は5月の16.1、最小値は12月の7.4、また、沖縄県八重山(やえやま)列島の石垣島での最大値は7月の22.4、最小値は1月の8.9となっている。
[大田正次・股野宏志]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…太陽からの放射が地表を照らすこと。太陽からの放射は日射と呼ばれ,地表に達する日射は直射光と散乱光に分けられる。大気中に雲や霧があると直射光の強さは著しく弱められ,ついには地物の影が生じなくなる。…
※「日射」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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