多くの、あるいは、ある範囲のすべての個別例に当てはまる共通な事柄をいい、「一般者」ともいわれる。特殊、個別に対する。人間の合理的思考はすべてことばを伴い、ことばを通じてなされる。ことばはすべて多くの事物に当てはまる共通な事柄をいうものであり、そこにことばの意味機能がある。たとえば、「三角形」という名称は正三角形、二等辺三角形、不等辺三角形というすべての特殊な三角形、また、その個別例に当てはまる共通な同一の事柄を意味する。このように多くの事物をある観点から総括し、一つのものとして把握する働きが思考の働きであり、そこに把握される「一つのもの」(多を通ずる1)が普遍である。感覚される個別の存在に対して、思考の対象である普遍が実在界においてもつ存在が何であるかは、哲学史上、古来盛んに論じられてきた問題である。
[加藤信朗]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…この対概念がその後〈形式formaと質料materia〉〈形式Formと内容Inhalt〉と呼び替えられて,形而上学的思考様式の基本的カテゴリーとして働いたことは,カントが《純粋理性批判》の〈反省概念の多義性〉の章で指摘しているとおりである。中世の普遍論争において特に論議の対象となった〈普遍‐個物〉ないし〈一般‐特殊〉という対概念も以上のような経緯と深くからみ合いながら形成されたものと考えてよい。
【本質存在(エッセンティア)と事実存在(エクシステンティア)】
このように形而上学的思考様式のもとで個々の事物が形相と質料の結合体としてとらえられることによって,もともと単純であるはずの〈存在〉概念,〈ある〉という概念が二義的に分裂することになる。…
…普遍universalia(類と種)は自然的実在であるか,それとも知性の構成物にすぎないかをめぐって行われた中世哲学最大の論争。前者の主張を実念論(欧語は実在論と同一だが近代の観念論に対するそれと区別して概念実在論,略して実念論と称することが多い),後者の主張を唯名論と呼んでいる。…
※「普遍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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