曲者・癖者・曲物(読み)くせもの

精選版 日本国語大辞典 「曲者・癖者・曲物」の意味・読み・例文・類語

くせ‐もの【曲者・癖者・曲物】

〘名〙
① 普通とはどこか違ったところのある人や物。
(イ) 変わりもの。奇妙なもの。一癖あるもの。変人
平家(13C前)七「光盛こそ奇異のくせ者くんでうって候へ」
徒然草(1331頃)六〇「寺中にも重く思はれたりけれども、世を軽く思ひたる曲者にて」
(ロ) なみなみでないもの。また、すぐれて巧みな人。よい腕前の人。妙手
※申楽談儀(1430)喜阿「疾く行くか、重なる山の木末よりと、一声に移りしくせ者也」
② あやしいもの。
(イ) 悪者。不心得もの。
曾我物語(南北朝頃)九「和田殿ききて、こはいかに、くせものとほりけるよ」
※御伽草子・唐糸草子(室町末)「我君の御命をねらひ奉るくせものなり」
(ロ) えたいの知れないもの。危険なもの。用心しなければならないもの。
※太平記(14C後)二三「是こそ件の院と云くせ者よ」
※桐畑(1920)〈里見弴〉ワキ「ただ、殆ど荷物らしい荷物を持ってゐないのがくせものだった」
(ハ) ばけもの。怪物。
※源平盛衰記(14C前)一「何鳥と云ふ事を知ろしめさず、癖物(クセモノ)なりとて御評定有り」
(ニ) 奇怪な姿形をしたもの。
※徒然草(1331頃)一五四「いづくも不具に異様なるを見て、とりどりにたぐひなき曲者なり」
(ホ) 私娼(ししょう)
浮世草子・好色一代男(1682)二「大溝あって日影うつろうに掉竹(さほたけ)わたし、とびざやの(きゃふ)、糠ぶくろ懸て有しはくせものなり」
(ヘ) 泥棒盗人密偵(みってい)
浄瑠璃伽羅先代萩(1785)六「ぐっと突込天井の。板こじ放せば怪しき曲(クセ)者」
(ト) いやしい者。下賤のもの。
実隆公記‐延徳二年(1490)七月一六日「灯呂共被下地下曲者等了」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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