江戸中期の奇石愛好家、鉱物学者。名は重暁(しげあき)、通称小繁(こはん)、幼名幾六、石亭はその号。近江(おうみ)国志賀郡坂本村(大津市)の拾井(ひろい)家に生まれ、琵琶(びわ)湖対岸の栗太(くりた)郡山田郷(草津市)の木内(きのうち)(通称きうち)家の養子となる。幼時から石に親しみ、1751年(宝暦1)に本草(ほんぞう)家(博物学者)津島如蘭(じょらん)(1701―1755)が主催した物産会を見学して如蘭に師事し、学問的に石を学ぶようになった。全国を旅行して2000種以上の奇石を採集し、同好の士を集めて奇石会を主宰した。晩年は著述によって弄石(ろうせき)趣味を広めた。主著『雲根志(うんこんし)』は、雲が岩石の間から出るという故事を書名とし、1772年(安永1)から1801年(享和1)までに3編16巻が刊行されている。採集、または見聞した奇石を分類記述した図誌で、伝説のある石、観賞価値のある石のほかに、本草学的にみた石(岩石、鉱物)、石亭が特設した変化(へんげ)類(おもに化石)、鐫刻(せんこく)類(おもに石器)を載せている。それぞれ地質鉱物学、古生物学、考古学の先駆的な業績である。滋賀県守山市今宿の本像寺に墓がある。
[石山 洋]
『今井功訳註『雲根志』(1969・築地書館)』▽『斎藤忠著『木内石亭』(1962/新装版・1989・吉川弘文館)』
(菊池俊彦)
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…木内石亭(1724‐1808)の著した石に関する博物誌。前編,後編,および三編があり,それぞれ1773年(安永2),79年,1801年(享和1)に大坂で出版され,その後版を重ねた。…
…享保年間(1716‐36)には幕府の殖産興業政策によって物産学が盛んになり,博物学のすそ野が拡大された。この時期には田村藍水,平賀源内,小野蘭山,宇田川榕菴らの学者のほか,《目八譜》の武蔵石寿,《毛介綺煥(もうかいきかん)》《昆虫胥化(しよか)図》の肥後藩主細川重賢,《雲根志》の木内石亭,木村蒹葭堂(けんかどう)などのアマチュア博物学者も活躍した。 一方,17世紀からは断片的ではあるが西洋博物学の知識も入りはじめ,中でもドドネウスの《草木誌》とヨンストンの《動物図説》は当時の本草学に大きな影響を与えた。…
…19世紀末フランスの作家ユイスマンスも逸すべからざる人で,その作品《さかしま》《大伽藍》で宝石について論じている。日本の江戸時代に,初めて鉱物に関する本《雲根志》を出版した石の収集家,近江の木内石亭の名も忘れずに記しておこう。【澁澤 龍】
[伝承]
宝石は古代より人類にとって魅惑的なものとして存在し,宝飾として用いられたのみならず,神秘的な魔力を秘めたものとして護符や魔よけに用いられてきた。…
※「木内石亭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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