青森県八戸市を中心とする地方で旧小正月に行われる豊年予祝の民俗芸能。現在は2月17日から20日までで,数十組のえんぶり組が出る。えんぶりの名称は,田をならす農具の朳(えぶり)から出たもので,芸能の中心は朳を摺(す)る動作にある。一組の構成は大きな烏帽子(えぼし)をかぶり,朳を持った烏帽子太夫3~5人(主を頭(藤)九郎,終りを畔止(くろどめ),他を中太夫という)を軸に,締太鼓,横笛,手摺鉦,鼓,三味線,尺八などの囃子方と,囃子舞の舞事や〈えんこえんこ〉と呼ばれる子どもの踊り手など20~30人からなる。まず17日に長者山の新羅神社に集合して奉納し,豊年祭の旗を押し立てて市内を門打ちして歩く。烏帽子は馬の頭をかたどったものといい,太夫は頭を低く打ち振って朳を摺り鳴輪を鳴らす。曲には摺り初め,中の摺り,田の神,渡り田,摺り納めなどのほか,えんこえんこ(さつま節),松の舞,恵比須舞などの余興曲がある。由来譚に諸説あるが,八戸藩の日記では1734年(享保19)が初見である。
執筆者:西角井 正大
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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