子宮内で胎児がその長軸を子宮の長軸と直交させるような位置にあるものをいう。胎盤が子宮の下方に付着する前置胎盤をはじめ、子宮の長軸を短くするような子宮筋腫(きんしゅ)や子宮の形態異常、羊水が異常に多い羊水過多、頻回の分娩(ぶんべん)で子宮壁と腹壁が緩み胎児の可動性が大きくなった場合などにみられることがある。子宮壁の緩みで横位となった場合は、分娩開始とともに子宮壁が緊張して、それまで横径の長かった子宮の縦径が長くなり、自然に横位から斜位を経て縦位に回転することもある。分娩開始前後に横位の場合、術者が腹壁上から胎児の頭部と臀部(でんぶ)をつかんで徐々に頭を下方に動かし、縦位にすることがある。これを外回転術という。外回転術はいつでも成功するとは限らず、子宮壁の緊張度が高いときには回転できず、抵抗のあるとき無理に行うと、胎児に障害を与えることもある。
また、未熟児で非常に小さく産道に十分な余裕があるか、胎児が死亡して屈曲性や圧縮性が大きい場合には、経腟(けいちつ)分娩も可能であるが、予定日近くでは横位のまま経腟分娩で無事に出産することは不可能で、帝王切開が必要である。横位のままで分娩が進行すると、下方にある肩甲部が骨盤内に下降してきて、胎児は強く屈曲して児頭を側屈させる。この状態では骨盤壁との間にすきまが多くでき、胎児を包んでいる卵膜が破れて早期破水をおこしやすく、そのとき上肢や臍帯(さいたい)(へその緒)の脱出をおこすことが多い。放置すれば臍帯が圧迫されて胎児が窒息するばかりでなく、子宮の下部が異常に伸展して薄くなり、子宮破裂をおこす危険性のある遷延(せんえん)横位という状態になる。
[新井正夫]
胎児の縦軸と子宮の縦軸とが交差する異常胎位をいい,全分娩中の0.5%にみられる。成熟児の経腟分娩はほとんど不可能と考えられる。母体の死亡率2%,児の死亡率は37%と高く,とくに経腟分娩時の児の死亡率は50%に達する。しかし妊娠末期,分娩第1期に胎児の自己回転がみられることがある。横位の原因としては,前置胎盤,子宮奇形,骨盤内腫瘤,狭骨盤,多産,多胎などがあげられる。分娩が始まると,前期・早期破水,臍帯脱出などがおこりやすい。最も注意を要するのは破水後に児の上肢や肩甲が娩出していることで,陣痛が過強になっても胎児が娩出できないため遷延分娩となり,子宮破裂の危険もおこる。初産婦で横位の場合,成熟児ならば帝王切開すべきである。経産婦の場合には経腟分娩も可能なことがある。
→異常分娩 →胎位
執筆者:鈴村 正勝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…縦位には頭が下にある頭位とその逆の骨盤位がある。また両軸が一致しないものに横位と斜位がある。妊娠末期には大部分の胎児は頭位となる。…
※「横位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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