歌論書。正徹著。2巻。1448-50年(文安5-宝徳2)ころ成立。別名《正徹日記》,また上巻を《徹書記物語》,下巻を《清巌茶話》とするものもある。正徹の自著とも門人の聞書ともいわれる。内容は,個条書形式で随筆風に,自作を含む和歌の注や風体論,歌人の逸話などを述べたもので,和歌の風体のうちで〈幽玄体〉を最高のものとして藤原定家に傾倒した正徹の歌論の核心を伝える書として注目される。門下の心敬から宗祇を通して,後代の連歌論や能楽論などへの影響も想定され,広く中世文学全体の理念を考えるうえでも重要である。上巻冒頭の〈歌道において定家を難ぜむ輩は冥加もあるべからず,罰をかうぶるべきことなり〉は有名。
執筆者:光田 和伸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
室町前期の歌僧正徹の歌論書。2巻。2巻のうち上巻を『徹書記物語』、下巻を『清巌茶話(せいがんさわ)』と区別する伝本もある。成立は1448年(文安5)と1450年(宝徳2)の両説がある。内容は、歌人の逸話、歌学知識、理想とする風体論、自歌自注など多方面にわたり、正徹の歌論を知るうえで重要な書。冒頭で「歌道において定家を難ぜむ輩(やから)は冥加(みやうが)もあるべからず、罰をかうぶるべきことなり」と定家崇拝を宣言しているのは著名。風体としては、妖艶(ようえん)で縹渺(ひょうびょう)とした幻想的な歌を理想としている。そこでの幽玄論は定家仮託の偽書である『愚秘抄(ぐびしょう)』、『三五記(さんごき)』などの影響下にある。
[稲田利徳]
『久松潜一・西尾実校注『日本古典文学大系65 歌論集・能楽論集』(1961・岩波書店)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…南北朝・室町時代では頓阿(とんあ)の《井蛙抄(せいあしよう)》,二条良基・頓阿の《愚問賢注》,良基の《近来風体抄(ふうていしよう)》等の二条派の歌論書,冷泉派の今川了俊の《弁要抄》《落書露顕(らくしよろけん)》などがある。 室町時代の〈歌論〉で重要なのは,《正徹(しようてつ)物語》である。正徹は了俊の弟子で,したがって冷泉派の流れをくむ歌人であったが,〈歌道において定家を難ぜむ輩(やから)は冥加もあるべからず。…
※「正徹物語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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