新撰 芸能人物事典 明治~平成 「殿山泰司」の解説
殿山 泰司
トノヤマ タイジ
- 職業
- 俳優
- 本名
- 殿山 泰爾
- 別名
- 旧芸名=夏目 銅一,殿山 泰二
- 生年月日
- 大正4年 10月17日
- 出生地
- 兵庫県 神戸市
- 出身地
- 東京市 京橋区銀座(東京都 中央区)
- 学歴
- 東京府立三商中退
- 経歴
- 生糸仲買人の長男。6歳の時、父とその愛人(義母)に連れられて神戸を離れ、1年後に上京。義母は銀座でおでん屋・お多幸を創業・経営した。昭和7年父が亡くなると俳優を志して家を出、11年新築地劇団に入団。同期には千秋実、多々良純、田所千鶴子がおり、薄田研二から“夏目銅一”の芸名をもらった。13年千秋、多々良、田所らと退団するが、すぐに帰参。これを機に芸名を殿山泰二とした。15年当局の命令により新築地劇団が解散した後は、興亜映画の一員となった。17年応召、20年中国で敗戦を迎えた。21年復員後、解散していた興亜映画が吸収された松竹の大船撮影所に所属。新藤兼人=吉村公三郎コンビの作品に多く出演、25年吉村と新藤が松竹を退社して独立プロ・近代映画協会を設立するとこれに参加。以後、フリーの名バイプレイヤーとして“三文役者”を自称しながら、幅広い俳優人生を続けた。新藤作品には、近代映画協会の同人仲間で、のちに新藤の妻となった乙羽信子とともに常連として出演。乙羽と夫婦役を演じた実験的な作品「裸の島」はモスクワ国際映画祭グランプリに輝き、「人間」「母」「性の起源」なども高い評価を受けた。新藤作品以外にも、吉村公三郎監督「安城家の舞踏会」、黒沢明監督「酔いどれ天使」、今井正監督「山びこ学校」「真昼の暗黒」「キクとイサム」、川島雄三監督「愛のお荷物」「幕末太陽伝」、今村昌平監督「にあんちゃん」「豚と軍艦」「にっぽん昆虫記」「復讐するは我にあり」「楢山節考」、大島渚監督「白昼の通り魔」「無理心中・日本の夏」「儀式」「愛のコリーダ」などの巨匠の名作から、娯楽作品・ポルノまで幅広く出演。禿頭とギョロ目をトレードマークに、ジャズとミステリーを愛する個性派俳優として鳴らした。また、個性的な口語文体による軽妙なエッセイも好評を博し、著書に「三文役者の無責任放言録」「日本女地図」「バカな役者め!!」「三文役者あなあきい伝」「JAMJAM日記」などがある。没後の平成3年、新藤により「三文役者の死 正伝殿山泰司」が書かれ、12年には、その生涯を描いた映画「三文役者」が新藤監督・脚本で製作された。
- 受賞
- NHK映画賞主演男優賞(昭37年度) 毎日映画コンクール主演男優賞(昭37年度)「人間」
- 没年月日
- 平成1年 4月30日 (1989年)
- 伝記
- 三文役者の死―正伝殿山泰司脇役の美学続・芸界達人浮世話 新藤 兼人 著田山 力哉 著加太 こうじ 著(発行元 岩波書店講談社青蛙房 ’00’96’87発行)
出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報