朝日日本歴史人物事典 「水木辰之助(初代)」の解説
水木辰之助(初代)
生年:延宝1(1673)
元禄期の若女形の歌舞伎役者。初代大和屋甚兵衛の甥で女婿。子役大和屋牛松,若衆形鶴川辰之助の時代を経て,元禄初年より若女形となる。元禄4(1691)年「娘親の 敵討」での有馬のお藤役が好評で,同8年,江戸へ下るお名残狂言の近松門左衛門作「水木辰之助餞振舞」(彼の得意芸を盛り込んだお家騒動物)でも同役を演じた。歌舞伎の華である所作事(舞踊)を得意とし,地芸(演技)を得意とした初代芳沢あやめとは好対照であった。元禄11年の「金子吉左衛門日記(元禄11年日記)」には,稽古で得意の踊りの振付を担当する姿がある。宝永1(1704)年,伯父の甚兵衛の死を契機に舞台を退いた。3代まであるが初代が最も有名。<参考文献>『歌舞伎評判記集成』1期,「元禄11年日記」(鳥越文蔵『歌舞伎の狂言』)
(北川博子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報