尿細管から
水腎症の原因である
上部尿路閉塞の原因としては、先天性疾患では腎盂尿管移行部
症状は原疾患によって異なります。小児の水腎症は、先天的な病気が原因で生じるものが大部分です。
尿路が完全閉塞した場合は、腎盂・腎杯内圧が急激に上昇し、被膜が伸展すると、
成人に多い症状は腹痛です。とくに、結石などの
また小児と同様、尿の停滞により尿路感染を起こし、いったん感染すると抗生剤に反応しにくいため、
超音波、CT検査などで、拡張した腎盂と萎縮し薄くなっている腎実質を証明します。単純X線検査で、尿路結石を証明できることもあります。
排泄性尿路造影では、腫大した腎盂が認められますが、腎機能の低下があれば造影剤が排泄されないので、原因精査のため逆行性腎盂造影が必要になることもあります。
原因により治療法は異なります。
先天性尿路閉塞症は、早期に診断がつけば外科的に治療可能です。年齢がいくつであっても、原因不明の尿路閉塞症の場合は先天性のものを疑うべきです。手術を行うかどうかは年齢、障害の程度、回復の見込み、片側性か両側性かによっても異なります。
後天性尿路閉塞症は、尿路結石、
泌尿器科を受診し、尿路閉塞の原因が何かを調べましょう。その原因が泌尿器科的な病気でない場合は、泌尿器科医にその原因疾患を診てもらう医師と連絡をとってもらい、情報を共有してもらいましょう。
来栖 厚
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
尿管,膀胱,尿道など尿路に通過障害があり,尿の流れが円滑でないと,それより上方の腎盂(じんう)や腎杯に尿の停滞が起こり,内部の圧力が上昇する。このため腎盂や腎杯は拡張し,腎臓は全体として腫大する。このような状態を水腎症と呼ぶが,拡張した部位によって水腎杯,水尿管などと呼ばれることもある。拡張した腎盂内には尿がたまっているが,その程度はわずかなものから数lに及ぶものまである。拡張の程度に応じて腎機能も障害される。尿路の通過障害が起こる原因は,先天性尿路奇形,尿路結石,膀胱癌,神経因性膀胱機能障害,前立腺癌などさまざまである。症状は側腹部の鈍痛や腫瘤などで,ほとんど症状のないこともある。しかし停滞した尿には感染や結石が発生しやすいので,このような合併症を伴うと発熱や疼痛が起こる。治療は,原因となっている尿路通過障害をとり除くのが原則で,主として手術が行われる。腎臓の拡張が高度な場合は,通過障害が除去されてもなかなか元に回復しないので,腎臓の摘出もやむをえないことが多い。
執筆者:上野 精
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
尿が停滞して腎盂(じんう)腎杯が拡張し、腎実質がそのために萎縮(いしゅく)した状態をいい、腎機能の低下を伴う。すなわち、腎盂の尿管移行部から尿管下端までの間に狭窄(きょうさく)、結石、腫瘍(しゅよう)などの尿流通過障害があると、同側の腎盂腎杯内に尿が充満して内圧が上昇する。その結果、閉塞(へいそく)部位のすぐ上流側から拡張が始まり、しだいにそれが上方へ及んで腎盂腎杯に達すると、腎実質は拡張した腎盂腎杯に圧迫され、すこしずつ萎縮していく。これが水腎症とよばれる状態で、腎実質が乏しくなるにつれて腎機能は低下する。大きな膀胱(ぼうこう)腫瘍や膀胱結石があったり、結核性萎縮膀胱や前立腺(せん)腫瘍あるいは先天性尿道狭窄など膀胱以下の下部尿路に通過障害があると、水腎症は両側性となる。
慢性の水腎症では無症状のことが多いが、結石などにより急激に水腎症がおこると、側腹部に圧痛や仙痛をきたす。診断は静脈性腎盂造影(IVP)による。治療は原因疾患の除去が原則である。尿管狭窄による水腎症では、狭い部位の位置によって、腎盂形成、尿管膀胱再吻合(ふんごう)、他側の尿管への端側吻合などが行われる。腎実質が極端に萎縮して腎機能が大部分失われている場合には、摘出してしまうか、無症状なら放置しておく。
[松下一男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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