海水が水質や湖水の運動に影響を及ぼすような湖。開水路を通じて海水との直接な交流のある場合がほとんどであるが、地下水の形で海水が間接的に浸入している場合もある。湖水の塩分は、海水と河川水との混合比に応じて広い範囲にわたる。深層には密度の大きな塩水が長い時間にわたって停滞し、無酸素層が形成されるために高濃度の硫化水素を含む。湖水の循環が表層のみに限られる部分循環湖となることが多く、福井県の水月湖(最大深度34メートル)はその典型的な例である。日本の湖を面積順にみると、上位に多くの汽水湖がランクされ、汽水湖は日本の大きな湖のなかで重要な地位を占めている。水生生物の多様性や内水面漁業の面でも重要である。成因的には大部分が潟(かた)・潟湖(せきこ)であるため、日本では太平洋沿岸に少なく、日本海沿岸やオホーツク海沿岸に多く分布する。北海道のサロマ湖・春採(はるとり)湖、能取(のとろ)湖、風蓮(ふうれん)湖、島根・鳥取県の中海、静岡県の浜名湖などが代表例としてあげられる。
[森 和紀]
湖水に海水が混入している湖。ラグーン(潟湖(かたこ))の大部分はこれに相当する。一般に表面積に比較して,水深が浅い。塩分濃度は海水の浸入の程度や,海水の干満によって異なる。底層部になるほど塩分濃度が高いことが多く,下層の比重が大きくなるので上下の水の循環が行われないため,底の方には酸素のない水が存在することがある。そのため還元状態を示し,福井県の三方五湖や北海道釧路市の春採(はるとり)湖などのように硫化水素が発生する。
日本の代表的な汽水湖としてはラグーンの浜名湖,中海(なかうみ),八郎潟,サロマ湖などがある。三方五湖は本来は淡水湖であったが,江戸時代(18世紀初め)以来の工事により嵯峨(さが)水道が開削され,水位が低下して海水が侵入したために,水月湖,日向湖などは汽水湖となった。逆の例として中海の淡水化があげられる(1989年,当面中止決定)。また,汽水湖は海岸地域に立地するため,古来干拓の対象となってきた。
執筆者:堀内 清司
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…塩湖または鹹湖(かんこ)ともいう。これ以下のものを淡水湖,海水の浸入による塩分の多い湖を汽水湖と呼ぶ。塩湖の分布はアフリカ東部,アナトリア高原,オーストラリア,北アメリカ西部等に多く,南極地方にも存在する。…
…溶存成分の量が500mg/l以下の湖は淡水湖,それ以上を塩水湖とする。また海水の侵入する湖を汽水湖と呼ぶ。(a)水素イオン濃度(pH) 湖水のpHはナクル湖(ケニア)の12や潟沼(鳴子)の2前後のように極端なものを除いて,だいたい6~8の中性のものが大部分である。…
※「汽水湖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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