改訂新版 世界大百科事典 「洪大容」の意味・わかりやすい解説
洪大容 (こうたいよう)
Hong Tae-yong
生没年:1731-83
朝鮮,李朝の実学思想家,科学者。字は徳保,号は湛軒。南陽洪氏。金元行の門人。天文学者,数学者,音楽家(玄琴の名手)として実力があり,朴趾源ら北学派の指導者的存在であった。とりわけ天文学には造詣が深く,郷里清州長命の自宅の前に私設の天体観測所〈籠水閣〉をつくり実測に当たった。35歳のとき書状官に選ばれた叔父の随員として北京に旅行し,ドイツ人の欽天監正(天文台長)と対等にわたりあったこと,またこのとき出会った厳誠ら杭州の三遊士との友情は有名。彼の名を不朽にするものは作品《毉(い)山問答》中に展開されている地球自転説(創唱は半世紀前の金錫文)を含む東アジア初の宇宙無限の主張であろう。全集に《湛軒書》がある。
執筆者:小川 晴久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報