瀬主(読み)せぬし

改訂新版 世界大百科事典 「瀬主」の意味・わかりやすい解説

瀬主 (せぬし)

大規模漁業の経営者で,その漁場の占有利用権者でもあるものを,三陸地方では瀬主といった。この地域は江戸時代には後進地域で,直接小生産者が平百姓として独立することがおそかったので,総百姓共有漁場成立があまりみられなかった。したがって瀬主のなかには,個人の漁場主兼経営者という形態が少なくなかったとみられる。まったくの個人経営ではなく何人かの長百姓の共同経営もあったが,そこにもやはり瀬主がみられた。その場合には漁場の権利は共有もありえたと思われるが,その場合でも瀬主は漁業経営の中心的担当者で,対外的代表者であったであろう。同様の存在形態は伊豆地方の津元などにもみられ,内浦方面の大網漁業の事例では,有力な漁場占有利用権(網度(あんど))の所有者の一人である有力長百姓が津元であり,その持分に応じた経営参加をするだけではなく,実質的な経営担当者であったことが知られている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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