火山灰(読み)かざんばい

精選版 日本国語大辞典 「火山灰」の意味・読み・例文・類語

かざん‐ばい クヮザンばひ【火山灰】

〘名〙 火山放出物一種。径二ミリメートル以下の溶岩の細粒や破片。爆発のときマグマがこまかくちぎれて粉末となったものと、古い岩石が破砕、噴出されたものとがある。固結したものを凝灰岩という。火山塵
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉七「近寄れば随分と火山灰の醜い所も見へるものと云ふことを思はず」

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デジタル大辞泉 「火山灰」の意味・読み・例文・類語

かざん‐ばい〔クワザンばひ〕【火山灰】

火山から噴出された灰のようなもの。火山砕屑物の一で、直径2ミリ以下の細粒のものをいう。ごく細粒であれば火山塵かざんじんともいう。
[類語]灰燼灰燼藁灰灰神楽死の灰火成岩火山岩黒曜石安山岩玄武岩深成岩花崗岩御影石溶岩軽石

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「火山灰」の意味・わかりやすい解説

火山灰
かざんばい

火山爆発で放出された、直径2ミリメートル以下の細粒の火山砕屑物(さいせつぶつ)。1932年にアメリカのウェントワースC. K. Wentworthらが定義した。火山灰を火山砂(さ)と狭義の火山灰に細分することがあり、気象庁は直径0.2ミリメートル以下を火山灰としている。また、広義の火山灰の同義語として火山塵(じん)の語を使う人や、火山灰を火山灰(直径0.2ミリメートル以上)と火山塵(直径0.2ミリメートル未満)に細分する人もいる。つまり、火山砂、火山灰、火山塵の使い分けは学界でも一定していない。火山灰には、地下のマグマに直接由来したもの、同じ火山体を構成していた岩石の砕片、さらに、その火山とは無縁の基盤岩の砕片などがある。1783年(天明3)の浅間山、1883年のインドネシアのクラカタウ火山、1963年の同国のアグン火山などの大爆発は、多量の微細な火山灰や火山ガスが成層圏まで吹き上げられて日射を遮り、地表の気温を低下させて、凶作を発生ないし助長したとされている。また、山腹に堆積(たいせき)した火山灰は、大雨や融雪などで二次的な火山泥流を生じやすい。日本では第二次世界大戦後、噴火で山麓(さんろく)の住民が死亡したのは、この降雨泥流による12人(桜島3件、有珠山(うすざん)1件)だけである。日本では爆発型噴火が多く、火山灰がよく噴出され、火山灰土や、火山灰が固結した凝灰岩や関東ロームなども広く分布している。なお、阿蘇(あそ)地方では火山灰を「よな」とよぶ。

諏訪 彰]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「火山灰」の意味・わかりやすい解説

火山灰
かざんばい
volcanic ash

火山の噴火で放出された火山砕屑物のうち,直径 2mm以下の最も細かい粒子状の物質。噴煙に含まれて空高く上昇し,卓越風などに乗って遠くまで運ばれ地表に降下する。日本では偏西風により,火山の東側に多く堆積する。灰が数cm以上積もると,建物や農作物への二次被害が発生する。さらに降雨が重なると,電力や通信,鉄道・道路などの交通機関といった社会基盤にも大きな影響を及ぼす。そのため気象庁では,火山に関する情報として噴火警報・予報などのほかに,降灰予報を発表している。火山灰は一方で,長期間かけて分解されることで栄養分に富んだ土壌をもたらす。なお,火山灰が噴煙中に飛散しながら周囲の火山灰を集め球状に成長したものを火山豆灰(火山豆石)といい,火山灰などが地上に堆積し固結した岩石を凝灰岩という。

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改訂新版 世界大百科事典 「火山灰」の意味・わかりやすい解説

火山灰 (かざんばい)
volcanic ash

径2mm以下の破片状火山噴出物。燃えかすではない。固結すれば凝灰岩と呼ぶ。化学組成,岩質などを表すには玄武岩質火山灰,結晶質火山灰,ガラス質火山灰,石質火山灰のように形容詞を付す。火山灰はマグマの発泡が急激に起こって生ずるものが多いが,高温の溶岩が水に触れて水冷破砕で生じたもの,より大きなものが粘土化などの風化作用で生じたものなど異なる成因のものもある。堆積様式としては降下火山灰と火山灰流の二つが主である。
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岩石学辞典 「火山灰」の解説

火山灰

固まっていない細粒の火山砕屑性の放出物で,粉砕されたガラス,結晶あるいは熔岩片などのような小さな同源の粒子からなっている.粗粒や細粒のものは,その破片が0.5mm以上であるか以下であるかによって区別される.細粒の凝灰岩はしばしば火山塵(volcanic dust)と呼ばれる.火山灰の平均粒径は2mm以下[Fisher : 1961]または4mm以下[Went-worth & Williams : 1932]である.32mm以上の堆積物は火山性集塊岩(volcanic agglomerate)という.放出物に同源のものが多くない場合には適当な形容詞が付けられる.火山灰は粉砕された熔岩で,木灰や石炭灰のように酸化したり燃焼した残りの生成物と混同してはならない.

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知恵蔵 「火山灰」の解説

火山灰

爆発的な噴火で発生する、粒の細かい噴出物。火口から噴煙となって上昇し、広範囲に飛散する。日本など中緯度では、偏西風で火山の東側に偏って堆積する傾向が強い。大規模な噴火では、火山灰は成層圏まで上昇、水平に流され、世界中を覆う。微小な火山灰や硫酸の液滴がエアロゾル(微粒子)として長期間成層圏に浮遊し太陽光の入射を妨げ、異常気象を起こすことがある。大噴火は同じ組成の火山灰を広範囲に堆積するので、その堆積層から地層の年代が決定される(テフロクロノロジー)。

(井田喜明 東京大学名誉教授 / 2007年)

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百科事典マイペディア 「火山灰」の意味・わかりやすい解説

火山灰【かざんばい】

火山放出物で,直径2mm以下の岩片の総称。細粒物質であるため,噴火により空中高く吹き上げられ,風下に流され降下し,一様な厚さの堆積物をつくることが多い。火砕流の主要構成物質でもある。火山ガラス,結晶粒,岩石の粉などからなる。

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世界大百科事典(旧版)内の火山灰の言及

【火山】より

…したがって,噴火記録の有無で休火山,死火山を分けることは本質的な意味が少ない。近年はテフロクロノロジー(火山砕屑物,とくに降下火山灰による編年学)や放射性炭素年代決定法によって過去の活動史を調べる方法が行われるようになった。これらの方法は,休火山,死火山を客観的に判定する有力な手段である。…

※「火山灰」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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