(読み)チチ

デジタル大辞泉 「父」の意味・読み・例文・類語

ちち【父】

両親のうち男親のほう。ちちおや。実父継父養父ともにいう。「一児のとなる」「の遺志を継ぐ」⇔
新しい世界を開いて偉大な業績を残した先駆者。「近代言語学の」「インド独立の
キリスト教における神。三位一体さんみいったいの第一の位格。「と子と聖霊」
[類語](1父親男親てててて親お父さんおやじちゃん父じゃ人乃父だいふ阿父あふ慈父パパ(義理の父)義父継父けいふまま父養父しゅうと岳父がくふ(他人に父をいう語)家父かふ家厳かげん家君かくん愚父ぐふ(一般的敬称)とう父上父君ちちぎみ(他人の父の敬称)父御ちちご御親父ごしんぷ尊父厳父父君ふくん厳君令尊/(3ゴッド天使

ふ【父】[漢字項目]

[音](漢) ホ(慣) ブ(呉) [訓]ちち
学習漢字]2年
〈フ〉
ちち。「父系父子父母岳父義父君父厳父実父祖父尊父亡父
父母の兄弟。「叔父しゅくふ・諸父・伯父はくふ
父のように仰がれる人。「国父神父
年老いた男。「父老/漁父
〈ホ〉年老いた男。また、年長の男性に対する敬称。「亜父尼父じほ(孔子のこと)」
〈ちち〉「父上父親
[名のり]のり
[難読]祖父おおじ小父おじ伯父おじ叔父おじ御祖父おじいさん御父おとうさん親父おやじ秩父ちちぶ

てて【父】

《「ちち」の音変化か》父親。ちち。てて親。
「―なりし人も、めづらかにあはれなる事なり」〈更級
[類語]父親男親てて親お父さんお父さまおやじちゃん父じゃ人乃父だいふ阿父あふ慈父パパ

ちゃん【父】

父親を呼ぶ俗語。江戸時代から庶民の間で用いられた。
[類語]父親男親てててて親お父さんお父さまおやじ父じゃ人乃父だいふ阿父あふ慈父パパ

とと【父】

子が自分の父を敬い親しんで呼ぶ語。⇔かか
夫をさしていう語。
「―がためかかに若菜をそろへさせ」〈浮・織留・六〉

ち【父】

上代、男子を敬っていった語。「おほぢ(祖父)」のように他の語の下に付く場合は連濁のため「ぢ」となることがある。
うまらに聞こし以ちせ、まろが―」〈・中・歌謡

しし【父】

《上代東国方言》ちち
月日つくひやは過ぐは行けどもあも―が玉の姿は忘れせなふも」〈・四三七八〉

かぞ【父】

《古くは「かそ」》上代、父をさす語。⇔いろは
「その―いろはの二はしらの神」〈神代紀・上〉

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精選版 日本国語大辞典 「父」の意味・読み・例文・類語

ちち【父】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 両親のうちの男の方。すなわち、実父・継父・養父の総称。父親。おとこおや。ち。かぞ。てて。しし。
    1. [初出の実例]「奥床に 母はい寝たり 外床に 父はい寝たり」(出典:万葉集(8C後)一三・三三一二)
    2. 「ちちの大輔の君はほかにぞすみける。ここには時時ぞかよひける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
  3. キリスト教で、神をいう。
    1. [初出の実例]「天に在(まし)ます父(チチ)よ」(出典:悪魔(1903)〈国木田独歩〉三)
  4. 新しいものの開祖。先駆者。また、偉大な貢献者。「現代物理学の父」
    1. [初出の実例]「スペンサーこそは英詩の又英文学の父であり、又母である」(出典:春興倫敦子(1935)〈福原麟太郎〉倫敦消息)

父の語誌

( 1 )もとは「ち」に父の意があったことが「まろが知(チ)」〔古事記‐中・歌謡〕などから分かる。「ち」は、また「おほぢ」(祖父)、「をぢ」(伯父、叔父)などの語基でもある。
( 2 )中古以後に「てて」の形も認められるが、徐々に俗語的になっていったことが「てて 父の俗語也」〔倭訓栞〕などからうかがわれる。
( 3 )日葡辞書」には「Toto(トト)」がみられ、この語にさまざまな接辞のついた語形が近世になって現われる。上方語では「ととさん」「ととさま」、江戸語では「おとっちゃん」「おとっつぁん」「おととさん」「とうさん」「おとうさん」などである。
( 4 )「ちゃん」は「おとっちゃん」の上略語とされるが、全国に広がる方言分布からすると、それほど新しい語とは思えず、「ちち」に由来する可能性もある。


とと【父】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 父をいう幼児語。子が父親を敬い親しんで呼ぶ語。おとなが子の立場に立って使う場合もある。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「かの息子にっこと笑ひ『なふとと、百はたごとはこの事か』といふ」(出典:咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上)
  3. 転じて、夫。亭主。
    1. [初出の実例]「茶屋の阿爺(トト)階子ふたつ目に揚りて」(出典:浮世草子好色一代女(1686)四)

ち【父】

  1. 〘 名詞 〙 男子を敬っていう上代語。ちち。かぞ。他の語の下に付いて用いられる場合は、連濁によって「ぢ」となることもある。
    1. [初出の実例]「横臼(よくす)に 醸(か)みし大御酒(おほみき)(うま)らに 聞こし以(も)ち食(を)せ まろが知(チ)」(出典:古事記(712)中・歌謡)

てて【父】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 父。ちちおや。
    1. [初出の実例]「この手、母にも勝り、母はてての手にも勝りて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
  3. 遊女屋の主人。〔随筆・異本洞房語園(1720)〕
  4. 下男のこと。
    1. [初出の実例]「よくよく、しゅごし申せとて、御ててにぞめされける」(出典:御伽草子・月日の本地(室町時代物語集所収)(室町末))

ちゃん【父・爺】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 父を呼ぶ語。江戸時代から明治初期にかけて庶民の間で用いられた。
    1. [初出の実例]「ちゃんのはのよな白い気を持ちやんな」(出典:洒落本・聖遊廓(1757))
  3. 茶屋や船宿の亭主などを呼ぶ語。
    1. [初出の実例]「ヲヤちゃんか。此間(こないだ)はいつ来ても逢ねへの」(出典:人情本春色梅児誉美(1832‐33)四)

かぞ【父】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「かそ」 ) 父をさす上代語。⇔いろは
    1. [初出の実例]「菱城邑人鹿父〈鹿父は人の名なり。俗、父を呼びて柯曾と為〉」(出典:日本書紀(720)仁賢六年是秋)

父の補助注記

日本書紀」とその関連の文献に現われる。語源や「ちち」との相違は不明。「父母」を表わすときは「かぞいろ」または「かぞいろは」の形になる。


しし【父】

  1. 〘 名詞 〙 「ちち(父)」の上代東国方言。
    1. [初出の実例]「旅ゆきに行くと知らずて母(あも)志志(シシ)に言申さずて今ぞ悔しけ」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三七六)

てて‐ら【父】

  1. 〘 名詞 〙てて(父)
    1. [初出の実例]「ててらかからに爺婆息災」(出典:浄瑠璃・雪女五枚羽子板(1708)厄払ひ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「父」の意味・わかりやすい解説


ちち
Fadren

スウェーデンの劇作家 A.ストリンドベリの戯曲。3幕。 1887年初演。男性と女性の間の永遠の相克,理性と感情の対立を,夫婦の葛藤を通して描いた自然主義リアリズムの代表作。全ヨーロッパに大きな反響を呼起した。

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デジタル大辞泉プラス 「父」の解説

1988年公開の日本映画。監督・脚本:木下恵介。出演:板東英二、太地喜和子、野々村真、斉藤ゆう子、森口瑤子、チャールズ・ボイド、玉井碧ほか。木下恵介の遺作。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【親子】より

…父母と子の関係を指すが,生みの親と子の血縁的な関係だけではなく,養親と養子,親分と子分,親方と子方の関係のように,法制上,習俗上親子関係が擬制される関係(擬制的親族関係)を指しても用いられる。
[親子と血縁]
 親子関係では,とくに血のつながりという自然的要素が強調されるが,いずれの社会でも,血のつながりがあればただちに社会的にも親子関係が発生するとされているわけではない。…

【家父長制】より

…家父長制は次の三つに分類できる。(1)家族類型としての家父長制 家族におけるいっさいの秩序が,最年長の男性がもつ専制的権力によって保持されている場合,こうした家族は〈家父長制家族patriarchal family〉とよばれる。…

※「父」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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