精選版 日本国語大辞典 「片付」の意味・読み・例文・類語
かた‐づ・く【片付】
[1] 〘自カ五(四)〙
① 片方に寄る。片寄る。多く「山(海・谷)かたつく」などの形で用いられる。
※万葉(8C後)一九・四二〇七「谷可多頭伎氐(たにカタヅキて) 家居れる 君が聞きつつ 告げなくもうし」
※散木奇歌集(1128頃)冬「夕間暮やまかたつきて立鳥のはをとにたかをあはせつるかな」
② ある者のほうにつく。付き添う。したがう。
※万書留(1653頃)「人の国も皆我国にかたつきてなびきしたがふ時は来にけり」
③ (②から) 嫁入りする。縁づく。「嫁く」とも書く。
※俳諧・野集(1650)六「よしあしとても捨られはせずかたつかぬ心こそほんのさとりなれ」
※永日小品(1909)〈夏目漱石〉人間「印袢天を着た男が、立つとも坐るとも片附かずにのらくらしてゐる」
⑤ 散らかっている物が置かれるべきところにきちんと整えられている。整頓される。
⑥ 物事が解決される。仕事が処理されて終わる。
⑦ じゃまな者がいなくなる。特に死ぬことをいう。
※闘(1965)〈幸田文〉七「あたし達なんかさっさと片付いちゃったほうが、こんななま殺しの辛い目みるよりいいみたい」
[2] 〘他カ下二〙 ⇒かたづける(片付)
かた‐づ・ける【片付】
〘他カ下一〙 かたづ・く 〘他カ下二〙
① 片方に寄せる。片方にきめて処置する。
※玉塵抄(1563)一七「両方を以てよいともわるいともかたつけぬぞ」
※虎明本狂言・茶壺(室町末‐近世初)「よういふた方へやらふずれ共、いづれもおなじやうなれば、かたづけうやうがなひ」
② ある者のほうにつける。付き従わせたりする。
③ (②から) 嫁入りさせる。縁づかせる。「嫁ける」とも書く。
④ 気持や様子、形などを落ち着かせる。どちらか一方に定まった状態にする。また、自動詞的に用いて、気どる。とり澄ます。
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「何時も可笑しく気改まり円めてゐた背を引伸して頸を据ゑ、異(おつ)う済して変に片付(カタヅケ)る」
⑤ 散らばっている物をきちんと整える。整頓する。〔日葡辞書(1603‐04)〕
⑥ 物事を解決する。仕事を処理する。また、残った食べ物などを食べる。
※人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)四「三方四方治りの宜(いい)様に落付(カタヅケ)て上げるから」
※森鴎外(1933)〈唐木順三〉五「単にエクザクトならんとする自然科学の影響としてかたつけるわけにはゆかない」
⑦ じゃまな者をいなくする。殺す。
※浄瑠璃・鎌田兵衛名所盃(1711頃)名所屏風「きゃつあらだててはあしかりなん、酒にゑはせてかたづけんと思ひ」
かた‐づけ【片付】
〘名〙
① 散らばっている物などを一方へ寄せること。ごたごたしている物事をまとめること。整理すること。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)二「其形(なり)けりですまして、ちとお片付(カタヅケ)となった」
※福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉王政維新「天下太平に向て来たが、新政府はまだまだ跡の片付(カタヅケ)が容易な事でなくして」
② 落ち着いてすましていること。
※春泥(1928)〈久保田万太郎〉向島「おや今日は、とか、まアお揃ひでどちらへ、とか、うそにもその位なことをいふのが至当ぢゃアねえか。━それを乙う片づけの、いい間(ま)のふりに」
③ =かりこみ(狩込)②
かた‐づき【片付】
〘名〙 他に付き添ったり、縁づいたりすること。また、身のふり方。
※浮世草子・傾城色三味線(1701)京「此里を出給ふは御身のほまれと申、御一生のかたづき、何とか心得給ふ」
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