要証事実の存否を間接的に証明する証拠。例えば,殺人罪の立証について,被告人に被害者を殺害する動機があったとの事実,被告人が事件後逃亡したとの事実などがこれにあたる。このように,情況証拠は,要証事実を立証する証拠としての性質を持っているとともに,それ自体が証拠による証明の対象となる事実でもある。そこで,これを間接事実ともいう。間接事実を立証するための証拠を間接証拠というが,情況証拠が間接証拠の意味で用いられることもある。情況証拠については,要証事実との関連性relevancyが問題とされることが多い。情況証拠は,要証事実の存在時期に対する時間的前後により,予見的証拠,同時的証拠,回顧的証拠に,また,要証事実を推認させる直接性の程度により,近接的証拠,遠隔的証拠に,それぞれ分類することができるが,情況証拠による事実認定においては,論理法則および経験則に反することなく,できるだけ近接的情況証拠を多面的に収集・検討する必要がある。
執筆者:長沼 範良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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