改訂新版 世界大百科事典 「王禎」の意味・わかりやすい解説
王禎 (おうてい)
Wáng Zhēng
中国,元の山東東平の人。生没年不詳。字は伯善。農業技術に通じた篤農家で,農具をみずから設計製作して普及に努め,南北中国にわたる総合的な農業技術書を,中国で最初に編纂した。安徽旌徳県,豊城県の長官として治績を挙げ,1313年(皇慶2)に刊行した《農書》22巻(あるいは36巻)では,農作業,栽培法,農具に関する詳細な記録を,273幅の図と共に残している。いわゆる《王禎農書》である。ただこの書は,農業技術に関する歴史的な集大成という意味も併せもっているのであって,すべてが当時の技術水準を示しているとはいえない。《農書》で注目されるのは,水力を利用した製粉機や紡績機の発達で,江西地方の水転連磨は,大軸に連なる三つの歯車によって9個の石磨(石製の挽臼(ひきうす))を同時に連動させることができる。このほか活字印刷についても検討を加え,陶活字やスズ活字に比べて木活字が優れていること,活字収納のために回転式排字架が有用であることを述べている。
執筆者:勝村 哲也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報