欠点・欠陥のあることをいう。法律行為における意思表示の瑕疵,売買の目的物の瑕疵,土地工作物の設置・保存の瑕疵,占有における瑕疵などが問題となる。(1)まず,売買などの意思表示において,詐欺・強迫によってされた意思表示を〈瑕疵ある意思表示〉といい,それは取り消すことができるとされる(民法96条)。表意者を保護するためである。(2)つぎに,売買の目的物にかくれた瑕疵があるときには,買主は,売主に対し損害賠償を請求することができ,瑕疵があるために契約の目的を達することができないときは契約を解除することができる(570条)。これを売主の瑕疵担保責任という。商人間の売買にはその特則が定められている(商法526条)。売買以外の有償契約には売買の規定が準用されるが(民法559条),請負契約には特則が定められ,仕事の目的物に瑕疵があるときは,注文者は請負人に対して瑕疵の修補を請求することができ,あわせて損害賠償を請求することもできる(634条以下)。(3)さらに,土地の工作物の設置・保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは,その工作物の占有者・所有者が被害者に対して損害賠償義務を負う(工作物責任)。占有者は第1次的責任者とされるが,損害の発生を防止するに必要な注意をしたときは免責される。その場合には所有者の責任が認められ,それは無過失責任である。ほぼ同旨の責任が,公の営造物の設置・管理の瑕疵について,国,公共団体に認められる(国家賠償法2条)。(4)最後に,〈瑕疵ある占有〉が問題となる。それは,悪意,過失,強暴,隠秘の占有をいい,瑕疵のない占有(善意,無過失,平穏,公然の占有)と区別される。瑕疵ある占有によっては動産の即時取得(民法192条)は認められない。また,瑕疵ある占有のうち,強暴,隠秘の占有によっては時効取得(162,163条)が否定され,また,悪意,過失ある占有によっても時効取得は認められるが,善意,無過失の占有が10年継続すれば時効が完成する(162条2項)のに対し,20年の経過を必要とする(同条1項)。
執筆者:川井 健
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