普及版 字通 「甘(漢字)」の読み・字形・画数・意味
甘
常用漢字 5画
[字訓] かぎ・あまい
[説文解字]
[字形] 象形
左右の上部に横に鍵を通す錠の形で、拑・鉗の初文。中にものを嵌入する意がある。甘声の字はおおむねその声義を承ける。〔説文〕五上に「美なり。口の一を含むに從ふ。一はなり」と甘美の意とするが、それは・の義をとったものであろう。甘の字はがその本字。甘はもと鉗の初文で、首かせに施錠する意の字である。
[訓義]
1. かぎ、くびかせ、くびかせのかぎ、はさむ。
2. と通じ、あまい、うまい。
3. あましとする、あまんずる。
4. よく熟する、熟して甘味がある。
5. と通じ、たのしむ。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕甘 アマムス・アマシ・アマナフ・ムマシ・ネムコロナリ・ネガフ・ネガハクハ・クツロク 〔字鏡集〕甘 アマナフ・アマネシ・ムナ(マ)シ・ネガフ・ネガハクハ・ココロヨシ・ネンゴロ・ツクロフ・タノシフ・タノシム・ヨシ
[部首]
〔説文〕に・・・甚をその部に属し、〔玉〕に甞など三字を加えるが、の他はみな甘美とは関係のない字である。は金文の「蔑(べつれき)」を、郭沫若は「蔑(べつかん)」にして免冑の意とするが、「蔑」は功暦を蔑(伐)旌(べつせい)(表彰)する意である。は犬の肩肉を神に供する意で、字形中の曰は肩の骨臼部分の象。また甚の上部は竈にかけた鍋の形で、(に)る意。すなわちの他の諸字は、甘の象に従う字ではない。
[声系]
〔説文〕に甘声として・拑・鉗・・・箝など十二字を収める。拑・鉗・箝などの字によって、甘が鉗制・嵌入の意をもつ字であることは明らかである。
[語系]
甘・・柑kam、hamは甘美の字。拑・鉗・箝giamは鉗子・嵌入の意をもつ字。甘美の意は草(かんぞう)より出ており、甘は鉗の初文である。
[熟語]
甘意▶・甘雨▶・甘液▶・甘▶・甘果▶・甘堝▶・甘鍋▶・甘甘▶・甘橘▶・甘苦▶・甘屈▶・甘結▶・甘言▶・甘肴▶・甘膏▶・甘坐▶・甘罪▶・甘旨▶・甘死▶・甘嗜▶・甘▶・甘辞▶・甘▶・甘酒▶・甘受▶・甘▶・甘▶・甘食▶・甘心▶・甘寝▶・甘▶・甘▶・甘毳▶・甘泉▶・甘鮮▶・甘膳▶・甘草▶・甘足▶・甘沢▶・甘茶▶・甘波▶・甘美▶・甘肥▶・甘服▶・甘分▶・甘芳▶・甘味▶・甘蜜▶・甘眠▶・甘冥▶・甘瞑▶・甘腴▶・甘養▶・甘楽▶・甘利▶・甘霤▶・甘▶・甘露▶・甘鹵▶・甘▶
[下接語]
含甘・言甘・口甘・酸甘・旨甘・食甘・辛甘・寝甘・清甘・甘・珍甘・甜甘・濃甘・肥甘・微甘・烹甘・和甘
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報