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江戸時代,城下町などで町の行政事務に従事する役人の総称。町役人の身分は町人であるが,その管轄範囲や事務の内容によって区別された。まず町全体(総町)を支配する町役人として,江戸の町年寄,大坂の総年寄のような役職がある。彼らは町の筆頭町人として,町奉行のもとで触の伝達をはじめ多様な総町の行政事務に従事し,同時に町の運営に関する各種の諮問・答申も行っている。複数であることが多く,実務の分担や月番交代で業務を行う場合もあった。大坂の総年寄は合議制であった。こうした総町支配の町役人のもとで,個別の町の支配を担当したのが,江戸の町名主,大坂の町年寄などの町役人である。それぞれの都市によって名称はさまざまであるが,町行政の自治的運営の中心として活躍した町役人である。江戸の町名主のように1人で数町を管轄する場合もあったが,直接住民に接し,町奉行および上層役人の指示によって触の徹底,訴願の取次ぎ,出頭のさいの付添い,不動産取引など契約の確認,トラブルの調停など多様な業務を処理した。町役人は町共同体から選出された事務官であるから,上からの支配業務を行うと同時に,それら共同体の維持にかかわる下からの要求の窓口としての役割も果たしたのである。また,こうした町役人のもとには事務補佐のための手代などが雇われていたり,書記の役目を果たす職種も存在した。これらも広義の町役人ということができる。町役人は自治機関としての町運営に関する権限を所持していたから,その利益代表として不公正な主張を行ったり,不正な利益を得る場合もあった。また町役人は通常自宅の一部を執務場所として使用したが,港町などでは会所を有し自治を強めていた。各町には本町人(家主も含む)の交代による運営機関が町役人の業務を支えていたため,総町の行政は少数町役人のもとで合理的に運営されていた。
執筆者:吉原 健一郎
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近世都市の個別町の役人。京都・大坂では町年寄,久保田(秋田藩)では町代,仙台では検断というように個々の都市によって名称は異なる。いずれも町の事務を行い町を代表するが,都市や個別町によって世襲であったり,短期の任期での交代制であったりする。京都・大坂の町年寄は1町に1人ずつで任期も長くて3年程度,久保田の町代は同じく短期ながら1町に2人ずつだが,仙台の検断は世襲である。この差異はそれぞれの町の成立事情やそれにもとづく自治的性格の差に由来すると考えられる。
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