改訂新版 世界大百科事典 「畑土壌」の意味・わかりやすい解説
畑土壌 (はたどじょう)
水田のように湛水(たんすい)しないで農作物を栽培する耕地の土壌を総称していう。未耕地の土壌では作物の生育はきわめて不良であるが,開墾し,堆厩肥(たいきゆうひ)などの肥料を与え,作物栽培を継続すると,しだいにその生産力は向上し,作物生産上安定した土壌に変わっていく。これを熟畑化という。しかし,熟畑化した畑土壌でも,土壌表面がたとえば森林土壌のように落葉枝で被覆されておらず直接大気にさらされているので,土壌浸食を受けやすい,養分の天然供給量がきわめて少ない,連作障害があらわれやすい,干ばつを受けやすい,微量要素欠乏がでやすいなどの特徴があって,作物生産を安定的に維持するには多大な注意を払う必要がある。日本の畑土壌は上記の畑土壌本来の特徴に加えて,山麓や台地の傾斜地を開墾した所が多く,5度以上の傾斜地は畑地総面積のほぼ半分にあたる120万haにも及び,また,酸性土壌をはじめとする不良土の面積も広い。畑土壌における連作障害の防止と地力の回復,増強のために,西ヨーロッパでは古くから輪作が行われてきた。18世紀末,イギリスのノーフォーク州で確立されたノーフォーク式輪作はクローバー,コムギ,カブ,オオムギを輪作するもので,クローバーで空中窒素を固定させ,カブで作土を深くし,クローバーとカブで家畜の飼育を増加させ,堆厩肥を増産して肥沃度を著しく増加させるのに成功した。
執筆者:松本 聰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報