翻訳|colic
俗に〈さしこみ〉といわれる痛みで,腹部の中空の臓器(胃,腸,腎盂(じんう),尿管,膀胱,子宮)などの壁をつくる平滑筋の異常収縮によって起こる。痛みは深在性のもので,数分~数時間の間隔で周期的に反復する。しかし,痛みが強い場合は連続的に感じることもある。イレウス,胆石症,尿路結石,胃潰瘍,回虫症などに際してみられる。
執筆者:工藤 翔二
ウシやウマにみられ,その腹部痛は臓器のいかんにかかわらず同様の症状を呈する。とくにウマでは感受性が強く,腹痛が急性の場合には,患馬は不穏状態を示し,前搔き(まえがき),腹部蹴り,かがみ込む,突然倒れるなどの動き,また発汗,心拍数増加,排尿様異常肢勢,膁(ひばら)部を見つめるなどの症状を呈する。穀物を一度に過食すると,急激な胃拡張を起こし,重篤な腹痛を起こし,さらに全身的なショックをまねくことがあり(過食疝),この場合ときには胃破裂をまねき致命的なこともある。発汗時,冷水の飲用とか共進会などへの出場によるストレスなどで間欠的な腸の痙攣(けいれん)性収縮をきたすこともある(痙攣疝)。腸内に糞が停滞して,その部分の拡張または全閉をきたすと,腸運動が減退し,持続的な腹痛を起こし(便秘疝),生まれたばかりの雄子馬では胎便の停滞がよく見られ,元気なく,哺乳もできない場合がある。このほか,腸の変位をきたした腸捻転,腸重積,腸の一部が腸の別の部分へ巻きついたり,腸の一部がヘルニアとなって腔所に進入し血行障害を起こすことがある(変位疝)。腸管内へのガスの急激なうつ滞(うつたい)が起こり,腸で激痛を示すこともある(風気疝)。これらに対しては,胃内にたまった内容の排除(カテーテル)や下剤や浣腸などによる腸内容の移動を容易にし原因を除く。変位疝では早期であれば外科手術により整復する。
執筆者:本好 茂一
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…心窩部(しんかぶ)(みぞおち)に起こる疝痛(しぼるような強い痛み)は古くから胃痙攣と呼ばれてきた。胃痙攣は,このような症状に対する呼名であって,疾患名ではない。…
…腹痛は,その起り方と性質から3種類に分けられている。第1は,胃,腸,胆囊,膵臓などの内臓から発する内臓痛性腹痛であり,おもに腹の中心線上に痛みの部位があり,さしこむようなきりきりした痛み(疝痛)で周期的に起こり,手で押さえたり腹を前に曲げたりすると楽になることがある。胃,十二指腸,膵臓の場合は上腹部,小腸はへその周囲,大腸は下腹部に痛みがあることが多い。…
※「疝痛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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