知恵蔵 「発達性協調運動障害」の解説
発達性協調運動障害
この障害を持つ人は、例えば「這(は)う」「歩く」といった乳幼児期の運動面の発達においてすでに、標準の月齢より遅れが見られる。学齢期には、いわゆる「不器用な子」「運動が苦手な子」として見られ、学業成績に影響を及ぼしやすい。また、同世代の子どもとの遊びについていけないといった社会的な困難も生じやすい。症状の程度によっては生活技能訓練を行い、社会生活への適応を促すこともある。
障害が表れる運動のタイプは、走ったり跳んだりといった全身運動(粗大運動)、はさみを使ったりボタンを留めたりといった手先の運動(微細運動)、スキップをしたり縄跳びをしたり楽器を演奏するなどの組み合わせ運動(構成行為)に分類されている。
原因はまだ不明だが、運動中の脳神経の働きを観察し、特定の部位に異常を認めたとする研究結果も発表されている。また、成長につれて不器用さが目立たなくなっていくケースが多い。
アメリカ精神医学会の現在の診断基準(DSM-IV-TR)では、広汎性発達障害とは区別することになっている。だが、本障害とADHD(注意欠陥多動性障害)やLD(学習障害)の合併例が存在し、かつADHDと広汎性発達障害の合併例も存在することから、全く別の障害というわけではないのではないかという見方が強まっている。。現在この診断基準は、2013年に予定されている改訂(DSM-V)に向けて、発達障害という概念も含め、再検討中である。
映画「ハリー・ポッター」シリーズの主演俳優ダニエル・ラドクリフは、この障害を持っており、インタビューに答えて、靴ひもが結べないと明かしたことがある。
(石川れい子 ライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報