デジタル大辞泉
「直腸炎」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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ちょくちょう‐えんチョクチャウ‥【直腸炎】
- 〘 名詞 〙 肛門のすぐ上部にある大腸の炎症。急性の場合、隣接臓器に波及し、痔核、直腸癌、直腸脱などを合併することが多い。粘液性下痢やしぶり腹を示す。慢性の場合は症状が軽い。〔医語類聚(1872)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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直腸炎
ちょくちょうえん
Proctitis
(直腸・肛門の病気)
直腸炎は炎症性の腸疾患(小腸、大腸の炎症)のひとつであり、最も症状が出やすく、また適切な検査を行えば最も診断がしやすい病気でもあります。主に下痢、血便、炎症性腸疾患の一部として腹痛を伴うこともあります。
特発性(原因がわかっていないもの)としては潰瘍性大腸炎、クローン病によるものがあります。感染性のものとしては赤痢、アメーバ性腸炎、カンピロバクター腸炎、偽膜性腸炎、性病(梅毒、エイズなど)、結核によるものがあります。外傷性のものとしては直腸脱、孤立性潰瘍、器具によるものがあります。そのほかに、虚血性腸炎、放射性直腸炎、薬剤性直腸炎(緩下剤や抗生剤によるもの)があります。
症状は主に下痢、粘血便であり、時に体重の減少、食欲不振、貧血などの全身症状を伴うことがあります。クローン病や潰瘍性大腸炎では、症状の強さは病気の重症度と相関関係があります。
下痢、粘血便がみられた場合は、直腸鏡や、さらに精密な大腸の検査が必要になりますが、直腸に関してはS状結腸までの検査でおおよその診断がつきます。さらに原因を確定するには、全大腸内視鏡検査、糞便の検査、腹部のX線検査、注腸検査(バリウムを肛門から注入してX線撮影をする)、直腸の生検(組織の一部を採取して調べる検査)が必要になります。
軽症~重症例いずれも、多くは保存的(手術を行わず)に治療されます。主な治療法は、抗炎症薬(副腎皮質ホルモン薬、サラゾピリン、ペンタサ、レミケードなど)、対症療法(止痢薬、ロペミン)、補充療法(鉄剤、ビタミンB12、葉酸)、食事療法(乳製品を避ける、低脂肪食)です。
潰瘍性大腸炎の約80%では保存的治療が行われます。クローン病の約半数以上では何らかの手術療法が必要になります。感染性炎症疾患に対しては、原因菌に対する薬物療法を行います。
下痢、粘血便が認められた場合は、消化器科、消化器外科、肛門科、または大腸肛門病・IBD(炎症性腸疾患の略)センターを受診してください。胃腸科では、十分な診断ができない場合があります。病状によっては手術が必要な場合があります。潰瘍性大腸炎では、10年以上経過した場合、がん化の可能性もあり、定期的な診察が必要です。
日常生活での注意としては、規則正しい生活を心がけ、アルコールをひかえ、普段から食事療法を心がけることが必要です。
潰瘍性大腸炎、クローン病、直腸がん
梅枝 覚
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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ちょくちょうえん【直腸炎 Proctitis】
◎潰瘍性大腸炎より症状は軽い
[どんな病気か]
潰瘍性大腸炎の多くは直腸から発症し、連続的に口側に向かって広がっていきますが、直腸に限局する(限られる)場合があります。これを潰瘍性大腸炎の直腸炎型と呼びます。直腸粘膜(ねんまく)は炎症により、ただれた状態となります。
本質的には潰瘍性大腸炎と同じ病気で、その1つの病型とみなされます。
そのほかに、放射線直腸炎、薬剤性直腸炎などがあります(コラム「その他の直腸炎」)。
[症状]
症状の大部分は粘血便(ねんけつべん)(どろどろした粘液に血液がまじった便)か血便(けつべん)で、ときにしぶり腹(ばら)(激しく便意をもよおし、腹痛があるのに便通がよくない)もみられます。
潰瘍性大腸炎と同種といっても、1日に数十回前後の下痢(げり)や腹痛という広範囲な潰瘍性大腸炎にみられる症状は少なく、下痢が続いても1日2~3回から4~5回程度で、症状は軽度です。また、貧血(ひんけつ)や栄養障害で全身状態が悪化して、生命にかかわるというようなこともありません。
[検査と診断]
X線を使った注腸造影検査(ちゅうちょうぞうえいけんさ)(肛門(こうもん)から大腸にバリウムと空気を注入してX線撮影する検査)、直腸鏡(ちょくちょうきょう)あるいは大腸内視鏡検査(だいちょうないしきょうけんさ)、直腸の表面の一部をとって調べる生検(せいけん)、組織学的検査などをふまえて診断されます。直腸炎型の場合、注腸造影検査ではほとんど異常病変が映らないことが多いため、内視鏡検査が重要です。
病変部は接触すると容易に出血します。また、直腸の表面には浮腫(ふしゅ)(むくみ)があり、発赤(ほっせき)しています。
粘血便や血便が出たり、下痢が続くような場合には、直腸・肛門の病気の専門医の診察を受けましょう。
◎治療の主体は薬物療法
[治療]
直腸炎型は軽症例が多いので、治療は薬物療法を主体として、手術が行なわれることはありません。
この病気は、よくなったり悪くなったりをくり返し、治りにくいため、医師と協力して根気強く治療を続ける必要があります。
また、過労や精神的ストレスが症状を悪化させることになるので、日常生活のなかから、その原因となるものを排除したり、また、負担の大きい仕事などはうまく軽減できるように工夫しましょう。
●薬物療法
腸管粘膜の潰瘍(かいよう)を修復する作用のあるサラゾスルファピリジン(サラゾピリン)、あるいは粘膜の炎症をしずめるメサラジン(ペンタサ)という薬の内服がたいへん有効です。
これらを服用しても軽快しない場合は、自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)によく使われる副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬(ステロイド)が使われます。これは、注射や内服のほか、坐薬(ざやく)やステロイド浣腸(かんちょう)として使われて良い成績を上げています。
直腸炎型の約10%は口側結腸(こうそくけっちょう)へ広がり、悪化していくといわれます。治療中は注意深い観察が必要になります。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の直腸炎の言及
【直腸】より
…直腸は腸内容の貯留と便の排出をつかさどり,消化吸収は行わない。直腸には癌の発生([直腸癌])以外に直腸炎や直腸脱という疾患がある。
[直腸炎proctitis]
原因はわからないが,直腸の粘膜および粘膜の下層までを侵す非特異性の炎症である。…
※「直腸炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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