眺望,景観を享受することができる権利。今日,権利としての確立が強く主張されている環境権の一種である。環境保護を目ざす運動の一環として,眺望阻害,景観破壊を阻止するために,その権利性が提唱されるに至った。すなわち,眺望ないし景観も,よりよい生活環境を構成するものとして法的保護の対象になるという考えに基づくものである。判例によれば,旅館業者等が眺望を営業用に利用している場合には,その眺望は財産上の利益として保護される。また,(1)社会通念上,眺望価値のある景観が存在しており,(2)当該場所の価値の眺望依存性が高く,(3)眺望保持が周辺土地の利用と調和するという要件を満たしているときは,居住用建物に住む個人も生活利益としての眺望利益を有するとされている。そこで,眺望阻害が権利の濫用である場合,あるいは具体的状況のもとで一般的に是認しうる程度(受忍限度)を超えると認められる場合は損害賠償ないし阻害行為の差止めが認められることになる。
執筆者:五島 京子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
建造物の所有者または占有者が、一定の風景を他に妨害されることなく眺望しうる権能をいう。この権能は、建造物の所有権または占有権中に包含され、その権利より派生する一作用たる権能であり、独立の権利ではない。この権能は、物権的請求権ないしは占有の訴えに類似するが、このような強力で積極的な権能ではなく、受忍限度を越えるときにのみ効力を生ずるものであり、権利濫用の理論が基礎とされる。眺望の法的保護を最初に認めた判例は、群馬県の猿ヶ京温泉事件であり、湖水の眺望を生命とする観光旅館の目の前に、同業者が悪意で新しい旅館の建築に着手したのは権利の濫用であるとして、建築の差止めが認められた(東京高等裁判所判決昭和38年9月11日)。
[竹内俊雄]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加