出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
『万葉集』の歌人。集中、石川郎女(女郎)と表記される人物が多く、それぞれ同一かどうか古来論議の的となってきたが、(1)天智(てんじ)朝(661~671)に久米禅師(くめのぜんじ)と贈答した人、(2)持統(じとう)朝(686~697)に大津(おおつ)皇子、草壁皇子と贈答した人、(3)文武(もんむ)朝(697~707)に大伴田主(おおとものたぬし)、大伴宿奈麻呂(すくなまろ)と贈答した人、の3人に分ける説が穏当であろう。(1)には恋の掛け合いの巧みさがみられ、(2)には政治的な抗争を背景とする両皇子への恋物語的な興味が寄せられ、(3)には歌のやりとり自体の社交的なおもしろみが込められている。(1)(2)(3)はそれぞれの時代の恋歌表現の典型を示しているとみられる。
[鈴木日出男]
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