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古文書形式の一つ。制は掟のことで,権力者が禁止事項を公示した文書をいう。文書様式としては下文(くだしぶみ)・下知状の形が多く,中世後期からはとくに後者が多く,書出しに〈禁制〉と書き,その下に規制対象範囲となる地名・寺社名を記し,本文を個条書きにした。内容は軍勢の乱暴狼藉,銭貨の徴発等を禁止し,違犯者に対する処罰を明記したもので,中世では神仏の崇敬,人心の収攬を目的とし,近世ではキリシタン禁圧を主とした。中世末期からは板札に墨書して,神社・仏寺の門前,村落の入口等人目につきやすい所に掲げた。そのことから制札・禁札ともいわれた。制札ははじめ縦長,後になると横長になり,近世の高札にひきつがれた。現存でもっとも古いといわれるのは1185年(文治1)の北条時政が河内国薗光寺に下したものである。応仁・文明の乱以降戦国時代のものがもっとも多い。
執筆者:飯倉 晴武
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鎌倉期以降、幕府や大名・国人(こくじん)などが、寺社・諸人に対しその保護と統制を目的として、掟(おきて)や禁止事項などを通知するために出した文書。禁札、制札、制符ともいう。禁制には、権力者が広く一般に通知する目的で市町(いちまち)・村落に掲示する場合と、寺社・市町・村落の要請によって出される場合とがあり、その性質上、木札として出されたため各地に伝存する。形式については鎌倉期は一定しなかったが、室町期以降になると禁制の前半部分に禁止事項の箇条書、後半部分に違反者への処罰文言を記載するのが一般的となった。戦国期には寺社・市町・村落などが、兵火災害から自己を守るために大名・国人に保護を求めたため禁制が増加した。記載内容は多岐にわたるが、寺社には軍勢の乱妨(らんぼう)・陣取・放火・竹木伐採の禁止、僧衆・神職への生活規制、市町には喧嘩(けんか)口論、乱妨狼藉(ろうぜき)・押売押買・国質所質(くにじちところじち)などの禁止が多く、村落には軍勢の乱妨や百姓への不当行為などの禁止を示すものが多い。
[久保田昌希]
…この〈法度〉が公権力の制定法をさす称呼として一般的に現れるのは,戦国大名の個別法令である分国法においてであり,やがてこれが江戸幕府にも継承され,武家諸法度のように制定法の名称として定着した。この法度と称された法は,禁法・禁令的性格が強かったためか,その後,法度という語には禁制を意味する用例がみられ,江戸時代には一般的用語として禁止,さらには刑罰を意味する語としても使用されるに至った。【勝俣 鎮夫】。…
…室町時代では御教書と御内書が幕府文書としては多く発せられ,下知状の残るものは少ない。なお室町時代の下知状様式の文書の一つに禁制(きんぜい)と過所(かしよ)がある。ともに幕府の奉行あるいは頭人などより出す文書で,前者は神社仏寺などに下し,境内への軍勢の乱入狼藉の禁止,山林竹木を刈り取ることの禁止などを定めたもの,後者は関所や津を通過するときの許可証として用いられた。…
※「禁制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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