種籾(読み)タネモミ

デジタル大辞泉 「種籾」の意味・読み・例文・類語

たね‐もみ【種×籾】

種として苗代にまくために選んでとっておくもみ

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精選版 日本国語大辞典 「種籾」の意味・読み・例文・類語

たね‐もみ【種籾】

〘名〙 種子としてまくため、えらんでとっておくもみ。
百姓伝記(1673‐81頃)八「種もみを出穂のうちにてゑりとればまじりなくしてこめぞよくなる」

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改訂新版 世界大百科事典 「種籾」の意味・わかりやすい解説

種籾 (たねもみ)

稲栽培のため発芽のもととするもみ状態の種。種もみ,稲種と呼ぶのがふつうである。そのなかでスジと呼ぶ地域が,日本海側では新潟県から長野県の北部,富山県の一部,さらに島根県の一部に分布し,太平洋側では高知県,大分県,宮崎県の一部,鹿児島県に見いだされる。家の筋,人の筋の筋と同義と考える説もあるが,そうすると筋は特定の霊的能力を継承した生命体だといえよう。種もみは稲が結実したときに選別するが,完熟した状態よりも少し早い時期に採取するのが効果的だと伝えている。種もみの保存は品種ごとに俵とか麻袋などに入れ,ネズミの害を防ぐために天井裏からつり下げることが一般的であるが,山口県や滋賀県,奈良県の一部では,屋敷内または近くの田圃などに,千本柱の高床式台をつくり,その上に俵を置いて上からわら円錐形にかぶせる種もみ囲いがおこなわれており,鹿児島県大島郡や沖縄県の高倉形式との類似をみせている。また,九州や四国地方の一部から中国,近畿地方の各地では,種もみ俵を夫婦の寝室である納戸に置き,正月には松飾などをして供え物をあげて祭りをするが,これは人間の生殖や出産と同じように,稲種に生命が宿り発芽への過程が準備されるためだという穀霊誕生説が有力である。なお,西日本の各地では,村ごとの氏神に所属する神田があり,宮座(みやざ)の構成員によって毎年交替で耕作がおこなわれている。そのさい稲の種もみは永代不変として純粋性が厳重に守られ,種もみは当番になった者によって採取されたのち祭りがおこなわれ,表の座敷など清浄な空間に安置される。以後当番は翌年種まきまではそこに女性を入れず,葬式に行かず,屋根に登らず,他人に食料を与えないなど,諸種の禁忌をともなった生活を送る。こうしないと稲の豊作が保障されず,村に不幸が起こると伝えるところから,稲の種もみに安定した穀霊が宿る期間と考えたようである。稲種の純粋性を確保し,その永続性を願う観念が村の繁栄をもたらすものとすれば,宮座によらず家単位で稲の種もみを確保し祭祀することとは,同一の観念にもとづくものといえよう。稲以外の雑穀根菜類について,その種を霊的に認識して祭祀するなどの民俗がまれであることから,種もみを絶対視する観念は,水田稲作農耕文化を構成する主要な要素とみることができよう。
赤米 →
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世界大百科事典(旧版)内の種籾の言及

【穀霊】より

…穀物に宿り,これを生かしている精霊・霊魂。穀霊信仰は万物に霊的存在が宿るとするアニミズムの一種で,植物崇拝の一環を成す。穀霊観念とこれに基づく儀礼・慣行は,程度の差はあれ,未開,文明を問わず,穀物栽培を生業とする諸民族に広く分布するが,典型的なものは稲作地帯に見られる。多くはイネの精霊・霊魂(稲霊・稲魂(いなだま))が,人間と同様に誕生(発芽),成長,成熟,死(枯死),再生の過程を繰り返すとの観念に基づいている。…

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