糖代謝経路

内科学 第10版 「糖代謝経路」の解説

糖代謝経路(糖代謝異常総論)

(2)糖代謝経路
 糖代謝の異常を理解するためには,まず,正常の糖代謝を知る必要がある.糖の代謝経路として主要なものに,解糖系,TCA回路,糖新生系,グリコーゲン合成・分解系,などがある(図13-2-2).
a.解糖系(glycolysis)
 解糖系は,グルコース1分子がピルビン酸2分子にまで分解される反応系で,1分子のグルコースから2分子のATP(adenosine triphosphate,アデノシン三リン酸)が産生される.産生されたピルビン酸は,ミトコンドリアに入り,TCA回路(tricarboxylic acid cycle)を経て,電子伝達系において酸化的リン酸化を受ける.その結果,36分子のATPが産生される.産生されたATPは,筋の収縮や,赤血球や筋で産生された乳酸の肝での処理に利用され,また,脳や肝細胞のエネルギー源として使用される.インスリンは解糖系を促進する方向に働き,グルカゴンコルチゾールはこれを抑制する方向に働く.
b.グリコーゲンの合成・分解系
 絶食時には,血液中のグルコース濃度が低下するのを防ぐため,血中グルカゴン濃度が上昇し,絶食が24時間以内の場合は,主として,肝臓に蓄積されたグリコーゲンの分解が促進され,グルコースが産生される.グリコーゲンの蓄積は,3割が肝臓で,その他の大部分は筋肉である.しかし,絶食時の血糖維持には,肝臓のグリコーゲン分解が主として行われる.
 一方,糖質の摂取後は,血中インスリン濃度の上昇と血中グルカゴン濃度の低下が起こり,グルコースからグリコーゲンが合成される経路が促進される.
c.糖新生(gluconeogenesis)系
 糖新生とは,アミノ酸,乳酸,グリセロールなどから,新しくグルコース合成に向かう経路のことである.24時間以上の絶食が続く場合に,主として肝臓でみられる.筋の蛋白の分解によって生じたアミノ酸,特にアラニンが糖新生に利用される.また,赤血球や筋収縮の結果生じた乳酸,脂肪の分解から生じたグリセロールが利用される.グルカゴン,コルチゾール,カテコールアミンは糖新生を促進し,インスリンはこれを抑制する.[花房俊昭]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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