現在地球上には200万種を超える生物が生存している。このように多様化した生物が生育しているのは,生物が地球上に発生して以来40億年に及ぶ歴史を通じて進化してきたためである。生物学の研究の目的は生命とは何かを追究することであるが,生命の最も重要な属性の一つに,その歴史性があげられ,歴史性が最も顕著に反映されているのが現生生物の多様性である。そこで,生物を分類することは,生物が40億年の進化の歴史のうちでどのように分化発展してきたかをあとづけることに生物学的な意味がある。このような生物の系統発生にもとづいた分類をすることを目的とする分野を系統分類学という。なお,単に分類学taxonomyという場合にも,系統分類を志向したものをいうし,系統学systematicsという場合も地質時代における系統をあとづける手がかりとして現生生物の比較研究を重視することになるので,系統分類学と本質的な差は認められない。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
生物をそれらの間の類縁関係に従って分類配列して、系統的に体系づける学問。地球上にすむ生物はきわめて多様であるが、それらの形態、発生、生活機能などを吟味すると、互いによく類似したものを含む多数の群に分けることができる。このような群をそれらの間の共通ないし類似性に基づいてより大きな群へ順次まとめていけば、系統的な体系がつくりあげられることになる。
系統分類学は、現在の生物が進化して生じたものであるとする進化説を基礎に置き、系統発生をよりどころとしているが、実際には過去の軌跡を実験的にたどることは不可能である。そのため、比較形態学、比較発生学、古生物学(化石学)、遺伝学などの成果を取り入れ、さらに生化学、分子生物学などの方法も導入して、より確実な体系へ改めていく必要がある。近年の遺伝学および分子生物学の発展は遺伝子の構成や分子レベルでの比較を可能にし、この意味で重要である。
[中根猛彦]
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