細波(読み)サザナミ

デジタル大辞泉 「細波」の意味・読み・例文・類語

さざ‐なみ【細波/小波/×漣】

《古くは「ささなみ」》

細かに立つ波。さざれなみ。
心の小さな動揺。また、小さな争い・不和。「心に不安の―が広がる」「二国間に―が立ちはじめる」
滋賀県琵琶湖西南沿岸一帯の古称
[類語]波浪白波逆波津波土用波うねり小波大波高波荒波波濤怒濤激浪男波女波余波徒波あだなみ逆浪げきろう横波海嘯夕波波頭なみがしら波頭はとう波の花波間

さざれ‐なみ【細波】

[名]
さざ波
「―浮きて流るる泊瀬川はつせがは寄るべき磯のなきがさぶしさ」〈・三二二六〉
さざ波がしきりに、または、絶えず立つところから、「しくしくに」「やむ時もなし」「なく」「しきて」などを導く序詞として用いる。
「千鳥鳴く佐保さほの川瀬の―やむ時もなしが恋ふらくは」〈・五二六〉
[枕]さざ波が立つ意から、「立つ」にかかる。
「―立ちても居ても」〈・三九九三〉

ささら‐なみ【細波】

こまかくたつ波。さざなみ。さざれなみ。
「風は吹かねども、や、―ぞ立つ」〈梁塵秘抄・二〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「細波」の意味・読み・例文・類語

さざ‐なみ【細波・小波・漣】

  1. ( 古くは「ささなみ」 )
  2. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 風が吹いて立つ、細かく小さな波。さざれなみ。さざれこなみ。
      1. [初出の実例]「左佐浪(ササなみ)の波越す安蹔に降る小雨間も置きてわが思はなくに」(出典万葉集(8C後)一二・三〇四六)
      2. 「汀涼しきさざなみに、水鳥あまた遊びけり」(出典:御伽草子・浦嶋太郎(室町末))
    2. 和菓子の一つ。うるち米の粉を砂糖で固め、表面に近江八景を浮き出させた落雁(らくがん)。滋賀県大津市堅田の名物。堅田落雁。〔随筆・一話一言(1779‐1820頃)〕
    3. 馬術で、静かに合わせる手綱のあやつり方の一つ。
      1. [初出の実例]「何れにても不拍子なる馬の分には、手まへへさっと引切て、跡はさざ波取合可乗なり」(出典:鹿足之次第(1477))
  3. [ 2 ] 琵琶湖の西南沿岸地方をいう。また、近江国(滋賀県)の古名。
    1. [初出の実例]「左散難彌(ササナミ)志賀の大わだよどむとも昔の人にまたも逢はめやも」(出典:万葉集(8C後)一・三一)

細波の語誌

( 1 )「ささ」は細小の意を示し、「ささやか」「ささやく」「いささ」の「ささ」と同根。
( 2 )[ 一 ]挙例「万葉‐三〇四六」の歌については、[ 二 ]地名と解する説もある。とすれば、上代に小さな波の意を表わす語は「さざれなみ」だけということになるが、地名でもその由来は小さな波の意が関係しているとみるべきで、「古事記‐中・歌謡」に「佐佐那美路(ササナミぢ)」があり、かなり古い語形と考えられる。また、この「万葉」例は「ささなみの」の形で用いられているので、「ささなみの」を枕詞とする説もあり、[ 二 ]の万葉の例も、この地方の地名にかかる枕詞とも考えられる。


さざれ‐なみ【細波】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 小さな波。こまかい波。さざなみ。ささらなみ。
      1. [初出の実例]「沙邪礼浪(サザレなみ)浮きて流るる泊瀬川寄るべき磯の無きがさぶしさ」(出典:万葉集(8C後)一三・三二二六)
    2. さざ波が常に、またしきりに立つところから、「間無し」「止む時もなし」「しく」「しくしくに」などにかかる序詞に用いられる。
      1. [初出の実例]「千鳥鳴く佐保の河瀬の小浪(さざれなみ)止む時もなし吾が恋ふらくは」(出典:万葉集(8C後)四・五二六)
  2. [ 2 ] さざ波が立つところから「立つ」にかかる。
    1. [初出の実例]「佐射礼奈美(サザレナミ) 立ちても居ても 漕ぎめぐり 見れども飽かず」(出典:万葉集(8C後)一七・三九九三)

細波の語誌

→「ささらなみ」の語誌


ささら‐なみ【細波】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「さざらなみ」とも ) 小さな波。さざなみ。さざれなみ。ささらみずなみ。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
    1. [初出の実例]「ささらなみ寄するみぎはに住む鶴や君が経む代のしるべなる覧」(出典:貫之集(945頃)五)

細波の語誌

( 1 )小さな波の意を表わす語は他に「さざれなみ」「ささなみ(さざなみ)」があり、いずれも「万葉集」に見えるが、「ささらなみ」は「新撰字鏡」(天治本。ただし、享和本では「ささなみ」)に見えるのが早い。しかし、上代に「ささら荻」「ささら形」などの語形があり、母音交替形の「さざれなみ」もあるので「ささらなみ」も上代にすでにあった可能性が高い。
( 2 )「ささら」は「ささ」に情態を表わす「ら」のついた語であるところから第二音節はもともと清音であったと推定される。しかし、「万葉集」には「さざれなみ」と濁音の語形も見えるので、比較的早く「さざらなみ」となった可能性も高い。なお、歌語としては中古以降「ささなみ」「ささらなみ」が使用されている。→さざれなみ


さ‐なみ【細波】

  1. 〘 名詞 〙さざなみ(細波)
    1. [初出の実例]「水上にもみぢちるらし神なびのいはせのさ波くれなゐにたつ」(出典:散木奇歌集(1128頃)冬)

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普及版 字通 「細波」の読み・字形・画数・意味

【細波】さいは

さざ波。

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